〜起業の戦略〜

最終話          10 11 12
1.企業が倒産するとき
@ あらすじ
リトルバードは百貨店出店用の大量の在庫を抱え、資金繰りにも困るような状況になった。不渡りを出す直前で、在庫をHANADAに売り渡すことで、倒産を避けることにした。一方、HANADAでは棚上が丸越デパートの店を乗っ取り、HANADAも倒産する。そのため、リトルバードは食器代金を受け取れず、店舗販売から撤退することにした。野島は自分のマンションを売却し、リトルバードの債務返済に充てる。そして、1年後…

A ドラマのポイント
a. なぜ銀行はリトルバードへ資金を融資してくれないのか?
既にある借金を返済していない企業に、追い貸しするようなのは商工ローンか街金くらいであろう。

b. リトルバードの戦略のどこが誤りで、経営が破綻したのか?
プランタン出店の失敗が命取りになった。小企業にとって、プランタンのような百貨店出店は魅力的ではあるが、資金面でリスクが高い。リスクヘッジができないようならば、出店を見送る勇気も必要。

c. リトルバードの従業員4人、多すぎないか?
月商がいくらかは分からないが、4人の人件費で60〜70万円ならば、損益分岐点売上高は150万円以上であろう。日商が5万円以上、知名度の少ない小企業には、大きなハードルかも知れない。この規模の店ならば、野島と太田の二人でビジネスを始め、軌道に乗ったら従業員を増やせば良い。

d. なぜ、リトルバード解散を決めたのか?
野島のマンションで全債務を支払え、多少なりとも退職金を出せ、私的整理による自主廃業という清算方式を取れるから。これ以上、ビジネスを続けて債務を支払えないと、信用をなくし、次に事業を開始しようとするときに問題になる。野島が出産を決意したことも、一つの理由であるかも知れない。

e. なぜ、HANADAは倒産したのか?
花田はリトルバード潰しばかりに頭がいっており、棚上に足をすくわれた。社長は自分の会社内部のことを掌握した上で、外部環境に挑まなくてはならない。

B 用語の解説
a. 不渡り…ある特定日にお金を支払う約束をした手形に対してお金が支払えないことを、手形が不渡りになるという。2回不渡り手形を出すと、銀行取引を停止され、事実上事業活動を行えなくなる。

b. 自主廃業…不渡りなどを出さずとも自主的に事業を止めること。
2.倒産の理由
@ 倒産の種類

a. 赤字倒産…債務超過になる→資産と含み益があるので、債務超過がただちに倒産にはならない
b. 黒字倒産…過大な設備投資や過剰在庫によって手元流動資金の減少で、借入支払い資金が不足する
A 倒産の理由

a. 資金繰りや資金回収の失敗・・・借入の返済ができなくなった
b. 競争激化、値段設定、販売力のなさ、価値の低さから生じる販売不振・・・自由が丘店での販売は軌道に乗っていたが、それだけの売上では不十分だった。
c. 在庫や生産の過剰・・・プランタン出店分の食器が出店取り止めで、過剰になった。
d. 投資や投機による失敗・・・プランタン出店の投資が無駄になった。
e. 従業員の不正行為・・・棚上のスパイ行為によって、ビアンカとの専売契約が無力化された。
3.倒産の前兆
@ 取引内容の変化(取引先変更・契約締結を急ぐ・納入場所の変更)
A 支払方法の変化(支払いサイトの延長・取引銀行の変更・融通手形)
B 販売活動の変化(販売不振・販売先の倒産・返品や値引き続出)
C 在庫・生産の変化(在庫急増・在庫管理不在・過大設備投資・未納期急増)
D 従業員や幹部の変化(経営者や経理担当者の不在・退職者続出・不正)
E 財務の変化(現金支払い率の低下・決算の遅れ・手形や売掛金の流動資産の急増)
4.倒産処理
@ 法的再建型倒産処理

a. 会社更生法・・・裁判所から再建の可能性があると認められた倒産すると社会的に影響の大きな企業の場合、管財人の下で再建を図る。
b. 民事再生法・・・裁判所から認められたら、債権者の債権を減じてもらい、現経営者が会社を再建する。中小企業救済を目的に作られたスキームだが、経営者が辞めなくて済むことから大企業も利用している。

A 法的清算型倒産処理
a. 破産法
b. 特別清算

B 法律によらない私的整理
5.倒産の予防
@ 毎月決算し、財務諸表を作成してチェックする
A 社長が必要な情報を把握しておく
B 各従業員の権限委譲を過度に大きくしない
C リスク低減のための努力をする
D 営業努力
E 品質経営の徹底