〜起業の戦略〜

第5話          10 11 12
1.チームワークのマネージメント
@ あらすじ

いよいよ三ツ木エンタープライズへホテルの企画をプレゼンテーションする日がやってきた。野島はイタリアへ行っているため、太田は一人で北イタリア風の長期滞在型ホテルを提案。野島はLA BIANCA BRILLANTEという食器メーカーを見つけだしてきたが、日本で総代理店の権利を得るため、決められた期限内に大量の食器を売らなくてはならなくなってしまった。売れなかった場合は、リトルバードの買い取りとなる。一方、プレゼンテーションの結果は、ブライダル企画の勝利に終わったが、出目が真実を告白し、太田の三ツ木に対する誤解が解けた。しかし、大量の食器を抱え、頭を抱える野島。三ツ木と結婚してまでも仕事を取れという野島は、仕事とプライベートは別という太田と対立する。しかも、空輸されてきた食器の一部は傷が入っており、野島は自分のミスを取り返そうとする。三ツ木から友人のブティックオーナーである秋尾を紹介され、インテリアコーディネートの仕事を請け負ってくるが、食器販売で頭がいっぱいの野島はお気に召さない。そんな中、太田は野島の隠している食器の不良品を見つけてしまう。リトルバードは早くも空中分解か…

A ドラマのポイント

a. リトルバードがプレゼンで負けた理由は?

太田は収益性の点でブライダル企画の計画に劣るようなことを言っていた。コテージタイプとはいえ、太田が計画した北イタリア風のホテル施設建設費は、結婚式場と比較すれば高くなる。その結果、減価償却費も多く計上されるであろうし、毎年の施設維持費も高くなろう。また、結婚式のある日だけに人員を手配すれば良い結婚式場と比較して、通年営業のホテルであればサービススタッフの人件費もかなり高くなる。その結果、収益性が結婚式場と比較して悪かったのかも知れない。ただ、結婚する人が減少している状況で、結婚式場も単独で運営するのであれば、それほど売上が期待できない気もするが・・・

b. 太田と野島の、仕事とプライベートの考え方、どちらに共感するであろうか?
ビジネスのために結婚しろ、という野島の考えは極論だが、仕事とプライベートはなかなか両立しにくいのは確か。どちらに優先順位を置くかは、自分自身で良く考えておいた方がよい。ところで、太田にはビジネス・ウーマンにプライベートはない、と言い切りながら、淀川ヒビキの誘いを断ったり、休日出勤する太田に「プライバシーの侵害だわ」と言う野島っていったい?

c. ブティックの改装の注文を引き受けた太田と、食器販売が先だと主張する野島。どちらの考えが適切か?
問題は、食器店開業の資金がないのに、食器を希望的観測に基づいて買い付けてしまったこと。問題の本質は資金不足と販売チャネルの確保であるが、販売チャネルの確保には資金も必要。よって、多少なりとも短期間で売上が期待できるブティック改装に優先順位を置いた方がよい。また、野島は店舗探しをしていたが、店舗による個人客向け販売よりも、食器を大量に買い取ってくれる無店舗の法人向け販売に集中した方がよい。意思決定の訓練を受けてMBAを獲得しているならば、野島のような短絡的な意思決定と行動はしないと思うが・・・

d. 野島が「太田さんはいずれリトルバードを辞めるかも知れない」と言うが、どうしてだろうか?なぜたった3人の会社で仲違いが起きるのか?
太田はインテリアコーディネートという才能を持っているので、リトルバードでなくても他の会社で働けるであろうし、自分で独立も可能である。食器販売を中心とするリトルバードで、偶然なことからインテリアコーディネートの仕事を再び手がけ、野島と食器販売するよりもそちらを取るかも知れないと、野島は考えたのであろう。たった3人の小さな会社でも、よほど事業目的や価値観の共有ができていないとちょっとしたきっかけで仲違いが起こる。また、日常の業務での仕事のやり方の相違、役割分担、待遇などが不満を増幅させる。会社が小さく、起業当初は給与も安いだけに、簡単に辞めやすい。小企業では余剰人材はいないので、誰かが辞めただけで競争力は低下するし、業務事態が停滞する懸念がある。野島は社長として、二人の動機付けにもっと気を配る必要がある。

e. リトルバードにおける鴨下の役割は?
実務がほとんどできず、女だけの会社の武器として雇ったふしがあるが、彼女の存在は組織的に重要である。もし、リトルバードが野島と太田だけであったら、二人の仲違いは会社の分裂につながる。鴨下が二人のショックアブソーバーになるし、接着剤になる。二人の組織はうまく行っている時は良いが、互いに逃げ場がないため、仲違いする可能性も高い。そこに3番目の人間が入り、組織を安定させるのである。二輪車より三輪車の方が安定しやすいのと同じである。ただ、3人になると、3人の小さな組織の中にインフォーマル組織が生まれる危険性には注意すべきだ。

f. 三ツ木と太田、二人の関係がどう変わったのか?どう変わるだろうか?
三ツ木は太田に対して女性を求めていたが、今回のプレゼンテーションの結果、仕事のパートナーとしての再評価をすることになった。一方、太田は三ツ木に行為を持っていたが、誤解もあって三ツ木をビジネス上での関係に留めようとしていた。しかし、誤解も解け、タクシーで不意にキスをされたことで、三ツ木を男としていっそう意識することになった。

B 用語の解説

a. 総代理店…日本における輸入権を持ち、独占的に販売できる。総代理店は代理店を募集し、日本で販売することも可能であるし、直営で販売することも可能。

b. リピーター…反復的に来場する固定客のこと。

c. 保証金…店舗や事務所を借りる場合に預けるお金のこと。敷金のようなもので、契約を解除するときに、瑕疵損害の賠償を除いた残りが返還される。
2.小企業におけるチームワーク
@ 事業開始のタイプ
a. 単独型起業…単独の起業者が社長となって全権を握り、単独で経営をしていく。

b. 共同型起業…複数の起業者が会社の要職につき、共同で意思決定に関与する。このタイプは出資比率によって、さらに対等的と主従的に分類される。リトルバードは野島が経営権を把握しているので、共同型主従的起業のタイプである。

c. スポンサー型起業…単独の起業者が外部から資本を導入し、単独で経営していく。出資をするスポンサーは日常業務に関する意思決定に関与しないが、投資目的を確保するため、経営上の重要な意思決定に対して影響力を行使する。

A 単独型起業のメリットとデメリット
a. メリット…一人で経営上の意思決定ができるため、シンプルかつスピーディー。

b. デメリット…意思決定を支援したり、チェックをしてくれるパートナーがいない。事業のすべての責任が自分のかかる。経営者の視点とコミットメントを持って働ける人間が一人しかいない。

B 共同型起業のメリットとデメリット
a. メリット…意思決定に複数の人間が関与することでより良い決定ができる。責任とコミットメントを持って仕事をする複数の人間がいる。

b. デメリット…経営上の意思決定におけるコンフリクトが企業活動に大きな影響を与える。

C スポンサー型起業のメリットとデメリット
a. 資金および経営上の支援を与えてくれる後ろ盾がある。

b. 経営上の重要な意思決定にスポンサーが口を挟む。スポンサーの意向に逆らえないことも多く、業績が悪ければ、起業者が会社から追われることもある。

D 共同型起業においてなぜ仲間同士対立するのか?
a. 起業目的や価値観の相違が意思決定でコンフリクト(合理的意思決定が不可能な状態)を生じさせる。

b. 仕事の役割、成果、報酬などの相違が妬みやコンプレックスに発展し、対立を生じさせる。

E チームワークを保つためには?
a. 起業する以前に、起業目的、価値観、能力、コミットメントの程度に関する相違を明確にしておく。特に金銭的なことは注意しなくてはならない。

b. 経営権に関して対等的な出資は避けて、最終的な責任者を明確にしておく。

c. 経営権を掌握する経営者といえども他のパートナーを尊重し、配慮する。

d. コミュニケーションを常に取る

e. 対立した場合の逃げ道や解決手段を用意しておく

f. 友人や親類などで共同起業した場合、ビジネスと個人感情を明確に区別して考えるように徹底しておく。それができなければ、まったくのビジネス上でのつながりで共同起業した方がよい。ビジネスでのトラブルが、プライベートにまで及ぶ懸念があるからだ。