(1)命令指揮系統
ライン組織は命令の一元性に優れ、トップの意思決定が下位者へ伝わりやすい。反面、組織内部の縦割りが強く、専門性を活かした内部交流が生じにくい、経営資源が有効に活用されないという問題がある。
ライン組織の欠点である専門性の視点に立った経営資源の活用が弱い、という弱点を解消するために考えられた命令指揮系統。部下は複数の上司を持ち、専門的な命令を受ける。命令の一元性が考慮されていないため、部下が命令の優先順位などで混乱する問題があった。
ライン組織とファンクショナル組織の欠点を解消するために生まれた組織。実線が命令関係、破線が助言関係。命令の一元性に優れたライン組織を基本にしつつ、専門性を活かすために助言関係を持ち込んだ。現代の組織構造の基本となっている。
「高原のホテルの組織」
八ヶ岳高原ホテルは面川支配人→若月副支配人→各従業員という赤の破線で描かれた命令系統を持つライン型組織である。しかしながら、若月がオーナーの矢野社長が派遣したお目付役であること、小池の存在感が大きいことから、黒の実線で描かれたライン&スタッフ型組織の方が実態に近いかもしれない。また、小さな組織ゆえに各業務間の相互作用は多く、手の空いているスタッフは忙しいスタッフを手伝うという有機的組織になっている。
(2) 組織設計のポイント
a
?命令の一元性・・・命令系統に関して、部下は一人の上司からしか命令されないという原則。命令の一元性が確保された組織は規律が正しく、上位者の意思決定が迅速な下位者の行動へ移せる。
b統制の範囲・・・1人の上司が担当できる部下の数。仕事の内容や状況によっても異なるが、経験則で15人前後と言われている。組織が大きくなり、メンバーが増えると、組織は上司(管理者)を増やして水平的分化をさせるか、部長、課長、平社員というように、組織を階層化(垂直的分化)して統制の範囲を逸脱しないようにする。
c 階層化・・・社長と平社員ならば2層構造であるが、社長が統制する部下の数が増えると、社長の下に部長という管理者を置き、社長は部長を管理し、部長は平社員を管理するという形にして、階層化することで統制の範囲を狭める。階層化した場合、階層を跳び越してのコミュニケーション、社長が平社員へ直接命令する、ということは命令の一元性を乱すので原則的に行われない。また、階層化すると、伝言ゲームではないが、社長の意思決定が直接平社員へ命令されるのではないので、組織の行動にスピードがかけたり、誤った伝達がなされる、平社員のモチベーションが下がるという欠点もある。
(3)組織形態
組織の保有する経営資源が多くなると、組織を分化させ、経営資源の管理を容易にしようとする。組織の分化の基準によって、職能部門制組織、事業部制組織、マトリックス組織などに分類できる。分化の基準が職能であると専門性が活かされ、経営資源の有効活用がなされる。権限は集中しやすい。一方、事業部制組織は、各部門で重複した経営資源を保有され、一見非効率であるが、異なる環境に適応しやすいという長所がある。権限は各事業部門へ移された分権的組織で、権限を持つ一方、収益責任を負わされる。本社は事業部門間の調整と、組織全体の戦略を考えること、事業部門では行えない共通する業務を行う、といったことで業務を限定する。
a 分化の基準…職能、事業、地域、顧客
b 権限の集中度…職能部門制組織は集権的であり、事業部制組織は分権的である。
c 職能部門制組織…会社の中の仕事内容で、部門化した組織。単数か少数の事業を持つ企業が採用する。ある仕事に関しては特定部門に権限が集中しており、トップマネジメントのコントロールがしやすく、集権的組織といえる。そのため、環境変化の幅が大きいときは、こうした組織構造が採用されやすい。経営資源の重複も少なく、規模の経済性を追求するには効率の良い組織である。ただし、製品や事業が多様化していくと、有効なコントロールがしにくい。