(1) サービス業の組織は人間が財産
a サービス産出の源泉は人に依存する部分が大きい
サービス業の特性として、顧客はサービスを生産され、提供されると同時にサービスを消費する、ということがあげられる。サービスの供給は機械(例:自動販売機)もあるが、多くは人間であることが多い。提供されたサービスの費用対効果もさることながら、サービスを提供する人間の印象で顧客満足度が大きく左右される。そのため、サービスを提供する人が重要になる。
b サービス組織のアウトプット←生産性(量)×顧客満足(質)
サービス組織のアウトプット、例えば、利益を左右するのは、従業員がどれだけ効率よく働いているかという生産性と、そのサービスの結果、顧客が感じる満足度の影響を受ける。
c 奉仕者としてのもてなし精神
サービス業の従業員は、直接顧客と接する部門の従業員はもちろん、直接は顧客と接しない従業員ももてなしの精神(ホスピタリティ)を持つ必要がある。もてなしの精神が顧客の多様なニーズを感じ、好感度のサービスを提供することになる。もてなしの精神は個人のもって生まれた資質とこれまでの学習から形成される。学習を効率よく行うこととサービス品質の維持のために、マクドナルドのようなファストフード店ではマニュアルを作り、従業員へ学習させている。しかし、良いサービスを提供したことで顧客が喜んでくれることへ、従業員が価値を感じてくれなければ、魂の入らないサービスや通り一遍等の融通の利かないサービスしか提供できない。
d 従業員が学習して成長する→組織の進化
組織を形成する経営資源はいくつもあるが、サービス組織に限らず組織のメンバーである人が組織の成果へ大きく影響することは疑いもない。そのため、従業員が学習して成長することと、その成長を組織へ有効かつ効率よくフィードバックすることが、組織の成長につながる。
(2)顧客とのインターフェイスで重要なこと
a 顧客のニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を理解する
顧客が望んでいるサービスをその場で理解する能力が、サービス業に従事する人間には求められる。こうした能力は一朝一夜で身に付くわけではないし、個人差もあるため、マニュアルという形で平均的な顧客のニーズとウォンツに応えるようにしているサービス業も多い。
b 臨機応変の判断と行動
顧客のニーズは千差万別であり、しかも、時間の経過とともに変容していく。そのため、顧客と接しながら、顧客のニーズを掴み、自らが提供するか他のメンバーへ情報を提供する従業員は、顧客に対して臨機応変なサービスの提供を心がけなくてはならない。旅館の仲居は、顧客にサービスを提供する最前線に立っているため、特に臨機応変なサービス提供を必要とされる。最近のサービス業では前述したように、サービスの提供をマニュアル化している組織も多いが、マニュアルがあるがゆえにマニュアル通りのサービスしか行わず、顧客のニーズの多様性へ対応しきれない危険性もある。
c コミュニケーション
顧客のニーズを探り、臨機応変なサービスを提供する過程で発生するのが、顧客と従業員のコミュニケーションである。そのため、顧客と接する機会が多い従業員はコミュニケーション能力を持たなくてはならない。そのため、加賀谷のようなコミュニケーションが不得意な従業員は、サービス業には厳しい人材といえる。
d パーソナリティ(外見と内面)
従業員の外見は最低限、顧客の不興を買わないようにする。一方、内面に関してはコミュニケーションをスムーズにできるような知識とスキル、そしてもてなしの精神を持たなくてはならない。
(3)顧客満足と従業員満足の両立
a 顧客満足と従業員満足
顧客へ満足をもたらすサービスは、従業員によっても生み出される。そのため、従業員が良いサービスを生み出すよう、動機づけを行わなくてはならない。動機づけは結果として、働きがいという従業員満足を高めるようにしなくてはならない。
b 従業員が生き生きと働ける環境と組織
従業員満足を生むには、良好な労働待遇と環境、良好な人間関係、仕事そのもののおもしろさ、組織における自分の存在意義といったものを配慮しなくてはならない。
c 従業員満足を生み出すリーダーシップ