(1)意思決定の基準
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a 誰のための利益を追求するかを明確にする・・・例えば、顧客を中心に考えるのか、従業員を大切にするのか。石塚は顧客に絶対切れてはダメという基準を持ち、中原は本間を守るために酔って絡んだ男性客へ怒った。
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b 優先順位づけ・・・酔った男性客を本間から引き離すための意思決定としては、いろいろなやり方がある。その中で、中原はすぐに解決するということを重視し、力づくで引き離そうとして喧嘩になった。顧客重視を優先する石塚だったら、冗談を言いながら、うまく場を和ませたままで男性客を本間から引き離そうとしたであろう。
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(2)意思決定の手法
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a 意思決定の前提の整理・・・自分の意思決定に対する傾向、意思決定に及ぼしそうな価値観、意思決定に関わる事実を整理してから、意思決定に入る。いろいろな前提を認知せず、整理しないで意思決定に入ると、ある特定要因に引きずられて、誤った意思決定をしてしまうことになる。
b シナリオ式意思決定・・・代替案を検討するとき、複数の代替案を用意し、代替案も時間を考慮した動態的なもので考えていくことが望ましい。それを意思決定をしていくための前提となるシナリオを複数つくり、こういうシナリオが実現したら、こういう意思決定を行う、というように、変動のリスクを考慮したシナリオプランニングという方式の意思決定が、一部の企業で採用されている。
(3)意思決定の支援
?a 既存の知識と経験を有効活用・・・知識や過去の経験から非定型的意思決定に関わるリスクを低減し、より定型的な意思決定化していくことで、意思決定を容易に、より適切なものにしていく。
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b 情報支援システムの活用・・・知識を形式知化し、組織メンバーで共有することは、意思決定の的確さを高めるのには有効である。そのツールとして、コンピュータを活用する。例えば、ある経営コンサルティング会社は、過去のコンサルティング事例をデータベース化し、コンサルティングという非定型的意思決定を支援するようになっている。
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c 意思決定の結果の検証・・・行った意思決定の結果、どうなったかを理解し、次のより良い意思決定にフィードバックする必要がある。
(4) 葛藤(コンフリクト)
?a個人の中、組織においての複数の人間間、もしくは集団間で生じる対立的、敵対的な関係。中原と若い男性客が葛藤状態になり、喧嘩へ発展した。中原の行動は、石塚の言うようにサービス業ではあってはならない。
b葛藤は合理的な意思決定をできない状況にする。両者の抱える問題から、両者にとっての最適な意思決定を妨げるのである。
(5) ビジネス上の葛藤が生じる次元
a同僚同士
客と喧嘩した中原とそれをたしなめた石塚の関係。
b上司と部下
上司は権限を行使し、部下がそれを受容しなくてはならない。しかし部下がその権限受容に納得がいかない場合、多くは生じる。面川が顧客に謝るのを見て、顧客へぺこぺこばかりしているホテルの仕事は自分に向かない、と辞めようとする中原と本間。中原と本間は面川との関係に葛藤を感じたから辞めようとしたのである。
c社内の部門間
縦割りが強い組織では、社内の部門が組織の下位目標を有し、その目標達成に他部門の利害を害してしまったり、他部門との協働や調整を拒むことがあり、それが部門間の葛藤を生じさせる。花壱は小さな組織なので、部門間の葛藤はなく、個人間の葛藤になってしまう。
d非公式組織間、公式組織と非公式組織間
公式に組織化された組織以外に、公式な権限指揮系統と外れて生まれる自律的組織が非公式組織である。その非公式組織が公式組織と葛藤を生じさせたり、非公式組織間で葛藤を生じさせることもある。例えば、自民党の派閥という非公式組織が、自民党の挙党体制という方針に反して、政権に参加しないなどの例が挙げられる。また、森派と江藤・亀井派のような派閥間で抗争を行う例もある。
e組織間
八ヶ岳高原ホテルと、矢野社長の会社の間で、ホテルの将来を巡って葛藤が生じるであろう。
(6) 葛藤のデメリットとメリット
a合理的な意思決定が不能になったり、協働が行えない。
b葛藤は破壊であり、そこから創造が生じる。葛藤を解決しようというプロセスが、変革を生み、新たな創造が生まれる。例えば、今回生じた葛藤から、面川に対する中原や本間の見方が変わり、彼らがホテル業の理念を学習し、彼らの新しいサービスを引き出すであろう。
(7) 葛藤の解決
a 完全解決…葛藤の原因を完全に除去する。中原と客との間の葛藤の原因は、本間に客が絡んだこと。客が帰るか本間がホテルを辞めれば、原因は完全に除去できる。でも、それは無理。
b 準解決…葛藤の原因を細分化し、部分的に解決する。または、異なった目的に切り替え、葛藤を生じさせないようにする。現実的な解決策だが、再び葛藤が生じる懸念がある。面川がバーの料金を50%オフにすることで、異なった目的を客へ与え、それを受け入れるかどうかに論点を変えて葛藤を解決した。
(8) 葛藤の解決手法
a コミュニケーションを良くする
b 仲介者を設ける
(9) 葛藤(コンフリクト)のマネジメント

a 競争…互いの利益をあくまでも追求する。このドラマで言えば、中原が若い男に取った行動が競争になるが、対価を取ってサービスを行うホテルでは、従業員がこうしたやり方をすべきではない。
b 和解…自らの利益を捨て、相手に譲る。中原と本間が全面的に客へ謝り、言うことを聞くこと。
c 回避…自己と相手の利益が衝突しないように避ける。朝、客が降りてきたとき、中原は厨房に逃げることで、客と会うことを避ける。
d 妥協…自らも、相手も譲り合うことで解決する。面川は客に本間へのセクハラの非を認めさせ、本間へ謝らせる一方、中原と本間も客へ謝る。両者にとって、不満が残るやり方になる。
e 協力…互いの利益を高め合うようにする。客の時計が壊れていたが、それをホテルの損害保険を協力(口裏を合わせる)して申請する事で、客は新品の時計を、中原は損害を客に請求される事がなくなる。
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