第7回 「ビジネスパーソンの意思決定」
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1.第6話
(1) あらすじ
林田製作所が試作品生産を引き受けたのを受けて、橋本常務と稲葉はハンパ課リストラに本腰を入れる。試作品のめどがついた二階堂たちの元へ、シンデレラの原料エコペットを供給する東亜ケミカルから原料を供給できないと知らせが入る。
二階堂は担当の伊集院部長へ直談判するがとりつく島もない。稲葉がその原料を横取りしようとしているらしいのだ。悩む二階堂に対して北野は伊集院に食い下がり、原料を供給してもらおうとするが・・・

(2) ドラマのポイント
A 稲葉の心情の変化を考えよう。
ハンパ課や北野を侮っており、ハンパ課課長が恋人ということもあって林田の工場を教えたが、それが仇となりプロジェクトが徐々に進行していく。そうなると自分の立場も脅かされると判断し、真剣になってプロジェクトを潰す気になった。

B 二階堂の北野に対する評価はどう変化していったか?その理由は?
最初は北野の考え方や行動を認めていなかったが、北野のお陰で仕事の成果があがっていくのを目の当たりにして、ビジネスマンとしての北野を認めるようになってきている。特に自分のやり方でうまくいかないものも、北野のやり方でうまくいっている。それに対して上司としてのプライドから反発していたところもあったが、今では、北野の影響を少しずつ受けている。

C 仕事とプライベートの行動原理の違いは?
仕事では仕事上の目標が優先され、成果も客観的に把握される。そのため、個人の感情は軽視される。一方、プライベートにおいては個人の満足感追求というあいまいなものが優先され、感情を抜きにして行動は語れない。

D なぜ、伊集院は北野の話を聞き、北野を選んだのか?
東亜ケミカルの利益からすれば、大量に購入してくれる稲葉の事業の方が望ましい。しかし、北野の純粋な想いに惹かれ、共感する過程で伊集院の判断基準が経済合理性以外の価値観に影響された。

E 二階堂ができないことをなぜ北野ができるのか?
二階堂はビジネス経験も長く、良い意味で常識人。行動する前に、可能か不可能かを判断してしまう常識があり、また、リスクの大きな事をしないようにする用心深さもある。それが、選択を狭め、目標達成へのなりふり構わない行動を控えさせている。しかし、ビジネスにおいて100%不可能なことはないし、北野のような目標達成への執念が道を開くこともある。自らの可能性を否定しないこと、成功への執念が二階堂に不足し、北野が優れている点であろう。

2.経営と意思決定
(1) 意思決定の仮説
a 経済人仮説
経済合理性のみで意思決定する人間をモデルにする。
b 社会人仮説
感情によって意思決定を行っていく人間をモデルにする。
c 経営(管理)人仮説
基本的には経済合理性で意思決定しようとするが、意思決定自体が制約され、個人の価値観に左右される人間をモデルにする。

(2) 意思決定の種類
a 定型的意思決定
ある課題に対して、これまでの経験や知識から、意思決定のためのプロセスが明確で、意思決定が予測できる。比較的に簡単な意思決定で、マニュアル化なども可能。
b 非定型的意思決定
ある課題に対して、これまでの経験や知識から対応しにくい、意思決定をするために試行錯誤し、意思決定が予測できない。高度な意思決定である。
c グレシャムの法則
定型的意思決定が非定型的意思決定を駆逐する。簡単な意思決定と難しい意思決定があれば、人間はどうしても簡単な意思決定を優先してしまう。そこで、会社の中では経営者はなるべく、高度な非定型的意思決定に没頭できるように、定型的意思決定を部下へ委譲していく必要がある。

(3) 意思決定の階層
意思決定には経営者が行うべき戦略的意思決定、部課長クラスが行う管理的意思決定、平社員が行う業務的意思決定がある。戦略的意思決定は非定型的意思決定の特性が強く、反対に業務的意思決定は定型的意思決定色が強くなる。

(4) 経営における意思決定の特徴
a 制約された合理性
意思決定に必要な全ての情報を得られるという絶対的合理性ではなく、限られた情報で、個人の価値観に左右されるという制約された合理性の下で意思決定を行うとされる。

b 意思決定に影響を与える前提
意思決定に与える要因として、価値前提と事実前提がある。価値前提は個人の価値観であり、例えば、稲葉よりも北野の事業の方が好きであるという伊集院の価値観が、稲葉の方が購入数量は大量であるという事実、事実前提より強く意思決定へ影響を与えたと分析できる。

c 意思決定の基準
考えられる全ての意思決定案からベストのものを選ぶのが最適化意思決定であるが、これは事実上不可能。そこで、限られた選択肢の中から満足できる案を意思決定するのが満足化意思決定である。満足できる意思決定が行えるまで、何度も意思決定を行うことを逐次的意思決定という。

(5) 意思決定のプロセス
意思決定は以下の4つのSTEPからなるプロセスで行われ、満足できる決定までこのプロセスのループを繰り返す。

STEP1 情報活動
意思決定に必要な情報を集める。
STEP2 設計活動
意思決定案を考える。
STEP3 選択活動
意思決定案を選択する。
STEP4 検討活動
意思決定の結果を分析する。




3.上手な意思決定方法
(1) 意思決定の基準
a 誰のための利益を追求するかを明確にする
b 意思決定に求められる目標に優先順位づけをしておく

(2) 意思決定の仕方
a 意思決定の前提の整理
いろいろな事実前提と価値前提を整理して、意思決定にどう影響するかを把握しておく。
b シナリオ式意思決定
前提条件が変化した案をいくつか作り、その案に従って意思決定を考えておく。

(3) 意思決定の支援
a 既存の知識と経験を有効活用
自分の知識や会社の知識を整理しておき、データベースを作っておく。
b 情報支援システムの活用
コンピュータに更新可能なデータベースを使い、意思決定の際に参考にする。
c 意思決定の結果の検証
意思決定の結果は必ず検証し、似たようなミスを何度もしないようにする。

〜信頼と誠実の経営〜