第3回 「権限・義務・責任」
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1.第3話
@ あらすじ
北野は社内研修で最低の成績だったため、女性だけのマーケティングチームで、社内のお荷物の販売促進8(ハンパ)課へ配属されてしまう。二階堂も人事部からハンパ課へ課長職で配属される。二階堂は社内のお荷物であるこの課から抜け出すことしか考えていない。そのころ、二階堂の恋人である営業企画開発室の稲葉室長が陸上界のスターであるカルロス・マジーカとの契約を進めるが決め手がない。二階堂はマジーカとの契約をハンパ課脱出のチャンスとしてとらえ、独断でマジーカへ接触し、妻へのプレゼントにと言ってアクセサリーをマジーカへ贈る。しかし、マジーカは離婚したばかりだったので怒らせてしまう。契約は当然キャンセルか、と思われたとき、北野がマジーカにある提案をするが…

A ドラマのポイント
A 二階堂が着任して直後に、ハンパ課から脱出することしか考えてないと部下へ言った事は正しいか?
部下のやる気は上司次第で変わってくる。新しい上司が自分たちのことを考えず、自分だけハンパ課から抜け出したいと言えば、部下達はどう思うだろうか?この上司は自分のことしか考えないのなら、私も課全体のことは考えず、私も自分事だけ考えたらいいんだ。この上司はこの課からすぐにいなくなるだろうから、従う必要はない。部下はそう考え、二階堂の指示には従わないし、課のために働く意欲はなくなるだろう。

B 北野が職場を掃除をする意味は?
まず、上司の二階堂に掃除を命じられたからであろう。ただ、北野はポイ捨てされた空き缶もゴミ箱へ自主的に入れている。自分たちの生きている環境は誰にも言われずにきれいにしていこうという意識を持っており、彼からすれば自分たちの職場をきれいにしていくのは当然の行動と考えているのであろう。会社再建で有名な日本電産の永野社長は、再建先の会社の幹部にトイレ掃除をさせる。経営不振の会社は自分の職場を大切にしていないという問題がある。そうした意識を変えさせるために、経営陣が先頭に立ってトイレ掃除をするのである。

C 二階堂がマジーカへ独断で会ったことは会社側からするとどう評価されるか?
会社の中の仕事は分業を前提にして細分化し、細分化された仕事を専門に行うための目標と権限を経営者から与えられる。それに伴って義務と責任も付随してくる。二階堂が与えられた目標と権限は販売促進8課の管理と、女性の視点でのマーケティング実行である。その目標に対して義務が生ずるし、責任を取らなくてはならない。それなのに二階堂はハンパ課のことはほったらかしにし、自分の気持ちを優先して権限が与えられていない、既に企画開発室が行っているマジーカとの契約へ上司への相談もなく関わろうとした。これは会社のルールを無視した行いであり、組織の規律を乱し、仕事でのリスクを増やすことになった。権限や義務に関してはあまり厳しくやりすぎると組織の硬直化という弊害がでるが、権限を超えて仕事をするのであれば上司への相談や関係部署への調整をし、余計なリスクを生じさせないことが重要である。しかし、仕事を達成する過程より結果が重視される組織文化(価値観)や行動基準がある会社の場合、結果さえよければ責任を問われないこともある。結果が悪ければ、過程が評価されない分、大きな責任を問われることになる。

D 「雑巾ってすごいですね。自分は汚くなっても周りを綺麗にする」と北野が言ったが、これをどう解釈するか?
周りの人間の仕事を達成させるために、自分が汚れ役になることの大切さを指摘した。二階堂に欠けているのは自分のために、何でも自分でやってしまうこと。上司ならば、部下を活かすために、しっかり働かなくてはならないのである。

E 北野がマジーカと賭をしたことをどう思うか?
通常ならば世界的な陸上選手であるマジーカに北野が勝てる可能性が低い。そうした可能性の低い方法で、会社の大切な契約を得ようと言うのは過ちである。しかも、二階堂に土下座をさせたくないということから賭を持ちかけたのであれば、社会人として論外。二階堂が自分のプライドさえ我慢すれば、契約は出来たかも知れない。北野の賭の申し出を、土下座をしたくないことから認めた二階堂は課長として失格である。ただし、どうしてもマジーカがどうしても許してくれないのであれば、少ない可能性でも追求するのはやむを得ない。
2.仕事における権限
(1) 権限とは?
A 会社における権限は仕事を遂行するための限定された権力や権利という意味である。これはピラミッド型の会社組織をうまく動かす為の工夫である。
B 会社において仕事のために権限を行使する中心的な方法は、命令や指揮することである。
C 権限は会社側から与えられた限定的権力ゆえに、仕事をしていく過程でその権限の超えるときはその許可を上司に取らなくてはならない。そうなると、その権限を持っている人の指示や命令をいちいち仰がなくてはならず、仕事がスムーズに行かないこともある。
(2) 会社における権限の分布
会社の中で偉い人の持つ権限ほど強力に、広範囲になり、行える仕事の重要性は高まる。

(3) 権限の委譲
A 権限を人に与えることを権限委譲という。これは自分一人でその権限を行使し、仕事を達成しようとすると、義務と責任が過重になり、仕事も効率よく行えないことから、権限を分業にしてやっていくために権限を他人へ与えるのである。
B 権限委譲の仕方
上司が仕事の目標、内容、権限を詳細に指示する方法と、仕事の目標のみ与えて権限も大雑把に与えて上司が責任を取るやり方がある。前者は指示型の部下に適切で、後者は自立型の部下に適切である。
C 権限委譲の際の留意点
・上司が余計なリスクをかぶらなくてすむように、権限の範囲を周知しておく。
・定型的な仕事の場合、権限委譲の内容を詳細に決めておいても大丈夫であるが、偶発的な事柄が生じやすい非定型的な仕事の場合、仕事の目標、権限の範囲、生ずる義務と責任だけを周知し、任せる方が良い。
3.義務と責任
(1) 権限と義務と責任の関係
与えられた権限に対して、それに等しい義務と責任を負わなければならない、という3面等価の原則が仕事で存在する。

(2) 義務
A 社員の義務とは?
与えられた職務上の目標と権限から発生する、その目標を達成するために適正に権限を行使する義務。社員としては最低限、就業規則を守る、上司の命令には従うという義務がある。
B 義務を怠った時はどうなる?
人事考課という形で評価され、評価が低くなる。また、著しい義務違反は減棒、左遷、降格、休職、解雇などのペナルティーが与えられる。

(3) 責任
A 社員の責任とは?
義務を怠らず、守るという責任。
B 責任の取り方
責任の取り方としては、上記のペナルティを受け入れること。ただし、個人ではなく、部署全体、上司との連帯での責任と言うこともありうる。

(4) 上司と部下の3面等価の原則
権限を委譲する上司と権限を委譲された部下の間の3面等価原則は、上司が部下へ権限を与えたとき、部下が権限を適正に使用しているか、義務を怠っていないか、監督する義務が上司に発生する。そのため、部下が義務を怠った場合、部下だけでなく、上司も責任を問われることになる。

(5) 報・連・相
・部下は与えられた権限を行使して業務を遂行する過程で、上司へ業務遂行の状況を報告、連絡、相談義務を負う。報告、連絡、相談を行うことで、部下はミスを減らし、自らの責任を軽減できる。
・報告は進捗状況など、定期的に行う。
・報告すべきことが出来た場合、速やかに連絡して上司の判断を仰ぐ。
・業務遂行の義務が達成できないような障害が生じた場合、相談して、助言を仰ぐ。
4.企業の社会的責任
(1) 企業レベルにおける3面等価の原則
企業は自らの利益のために経済活動を行う権利(権限)を有している。しかしながら、その権利と道東の社会的義務、例えば、法律を守って経済活動を行う、税金を適正に納める、会社の経済活動に関わる利害関係者へ配慮する、などの義務を負う。そして、その義務を履行するための社会的責任が発生する。

(2) 企業の果たすべき社会的責任
A 社会的責任必要論
企業が社会を構成する一員ゆえに、社会的責任を取るのは当たり前。企業が負うべき社会的責任の範囲が拡大している。従来は株主、顧客、社員程度であったが、会社の属する地域、一般市民、環境などへの社会的責任が拡大している。
B 社会的責任不要論
経済学者のフリードマンは企業は自らの目的を追求していれば、市場が企業の義務をカバーしてくれるため、社会的責任は株主に対する責任を取ればいいと主張した。

(3) なぜ企業が無責任な行為を行うのか?
A 企業の目的
企業の目的は利益を上げ、株主(資本の出資者)の価値を最大化することが企業経営者の重要な役割になる。その目的達成への意欲や圧力から、企業に課せられた義務が疎かになることもある。
B 組織の制度の問題
企業が利益を追求するために、そこで働く人々も、人事、報酬、日常の管理のシステムによって利益を追求するよう仕向けられる。その結果、社会的倫理に反する行為であっても、会社のためにとか上司の命令で行ってしまうこともある。
C 人の問題
企業は多数の人が働く場である。そこには独特な価値観や雰囲気が形成されてしまうことも多い。そのため、多数でやれば怖くないという感覚で、社会倫理に反する行為を会社ぐるみでやってしまうこともある。最近の三菱自動車や雪印食品の不祥事が内部告発によって明るみに出たことを考えると、そうした価値観も変わりつつあるのかもしれない。

(4) 企業の社会的責任と社員の社会的責任
企業もそこで働く社員も共に社会的責任を組織として、個人として取らなくてはならない。
〜信頼と誠実の経営〜