第1話            10 最終話前半 最終話後半
1.経営とは何か?

(1) あらすじ

大手商社伍代物産食料部輸入第3課課長の久保田渚(浅野温子)は、彼女の失敗の責任を取らされ、九十九里にあるさばの缶詰製造関連会社(九十九里浜水産缶詰工場株式会社)へ1ヶ月の期間限定で出向させられた。缶詰工場は赤字を垂れ流しているが、工場の社員は危機意識もなく、のんびり仕事をやっている。久保田の上司の長峰は、工場の経営不振を理由に久保田を辞めさせようという腹づもりだが、久保田は1ヶ月我慢すれば本社へ戻れると信じている。

(2) 主な登場人物

役名(出演者)
個人データ
久保田渚(浅野温子) 伍代物産食品部のやり手課長であったが、仕事上での失敗から九十九里浜水産缶詰工場長へ左遷された。34歳独身。
三国清太郎(玉置浩二) 九十九里浜水産缶詰工場の品質管理主任。会社の野球チーム、「マカレル」のキャプテン。36歳、バツイチ。
望月しじみ(鈴木杏樹) 九十九里浜水産缶詰工場工場次長。地元の網元の娘で23歳。
大森玄洋(西村雅彦) 九十九里浜水産缶詰工場経理主任。元々は伍代物産で岩佐の同僚であったが、仕事上の失敗で左遷されたバツイチ、37歳。
岩佐英昭(石田純一) 伍代物産通信事業部のエリート社員。のちに伍代物産監査室へ異動した37歳、独身。
剣光彦(村田雄浩) 九十九里浜水産缶詰工場総務担当の謎の34歳。
塩谷泰夫(近藤芳正) 九十九里浜水産缶詰工場営業と仕入担当の26歳。妻は入院中。
早川直人(井ノ原快彦) 九十九里浜水産缶詰工場作業管理担当の高校を出たての18歳。母親はスナックを経営。工場従業員のたまり場になっている。
小松沢伸郎(細川茂樹) 九十九里浜水産缶詰工場工場保守担当、25歳の遊びたい盛りでもてる。
ケント・ランドール(レックス・アンヘレズ) タイからの研修生で27歳。
石井武志(堀真樹) 九十九里浜水産缶詰工場作業管理担当の19歳で、直人と異なりまじめな青年。
丸山三郎 九十九里浜水産缶詰工場倉庫管理担の49歳。幼い子供が3人いる。
長峰裕一(小野武彦) 伍代物産食品部取締役部長から監査室長取締役へ異動した45歳。
竹中五月(高島礼子) 久保田の後任になった伍代物産食料部輸入第3課課長代理の30歳。
倉田(塚本信夫) 伍代物産専務取締役

(3)物語の背景

a. 缶詰工場の場所(千葉県銚子市の九十九里浜近辺)

b. 伍代物産=大手総合商社

c. 九十九里浜水産缶詰株式会社=伍代物産が経営権を持つ子会社

(4) 用語解説

a. 出向…他の会社(子会社を含む)へ出て働く事

b. 左遷…仕事で失敗したり、上司に睨まれて出世コースから外され閑職に飛ばされる事

(5) ドラマのポイント

a. なぜ久保田は民自党の平林議員を怒らせてしまったのか?

政治家からのビジネスへの介入をかわすことは、一介の商社課長では無理。納得がいかないかもしれないが、損をして得を取る発想も必要である。

b. 久保田が失脚した本質はどこにあるのか?

女性であること(日本のビジネス社会では性差別がある)、攻撃的性格で上司に嫌われていたこと、個別案件だけを見ていて会社全体を考えられなかったこと(管理職としてはしかたない?)、状況に応じて柔軟な行動が取れないこと、仕事への関心が強く人間の感情を軽視、強力な後ろ盾がいない一匹狼etc。社会人になったら組織をうまく利用しつつ、組織に適応していくという課題に君らもぶつかるはず。将来、エリートビジネスマンになりたい諸君は、この久保田の失脚からよく学んでおくこと。

2.経営とは何か?

(1) 経営(management)=組織の目的(必ずしも営利目的ではない)を有効かつ能率的に達成するための過程

(2)管理(administration)=組織を経営していくため経営資源に対して影響力を行使して統制していく

経営と管理では経営の方が上位概念。経営をする人は経営者で、会社では社長がそれにあたる。また、取締役という肩書きを持つ重役を経営陣という。管理する人は管理者で、会社では部長や課長がそれにあたる。

(3)経営資源=人+金+物+情報

(4)経営のシステム…資源の投入から価値の産出までの統合された体系

(5)経営の管理サイクル=Plan→Do→Check

(6)管理の機能=意思決定+リーダーシップ+動機づけ

(7) 管理原則

a.分業・・・仕事を分けて専門化して効率を上げる

b.権限と責任の配置・・・仕事を行うための権力である権限とそれに付随した責任を与える

c.権限の集中・・・特定権力を特定の人や部署へ集中させることで、効率化と一貫性を向上させる

d.命令の一元性・・・命令を受ける人が迷わないようにするため、命令は一人の上司から行われる

e.統制の範囲・・・人間が管理できる範囲は無制限でなく、経営陣では5人程度、管理者で20人程度しか管理できないとされる

f.階層組織・・・統制の範囲があるため、組織の規模が大きくなったとき、管理者を増やしていくことで対応する。それを上下関係のある管理者を置くことでできるのが階層組織。会社だと、偉い階層から社長→副社長→専務→常務→部長→課長→係長→一般社員となっている。

(8)三面等価の原則…権限=責任=義務

3.社会人として生きていくための知恵

(1) なぜ久保田はビジネスで失敗したのか

自分の置かれた状況を適切に判断し行動できなかった。特に交渉の場合、相互依存関係を前提に、環境や力関係を考えて、自らの利益を追求する必要がある。

(2)久保田の行動特性(competency)が職場にどのような影響を与えたか?
自分で意思決定し行動する+部下を手足のように使う+周囲を気にせず目標に邁進する→上司からは疎まれ、部下からは信頼されていなかった

仕事は必ずしも経済合理性を前提に考え、行動していくわけではない。ビジネスには人が介在しているので、人間関係をしっかり形成してビジネスをしていくべきであろう。

(3)仕事の総量−部下の仕事=上司の仕事

なんでも上司が仕事をしてしまうと、上司の負担が重くなりすぎてしまうし、部下が育たない。管理者は権限を部下へ与えながら、重要な部分をしっかり管理するほうが良いかもしれない。

(4)男性社会で女が生きていく知恵…「男のように考え男のように働く」vs「女を武器にしていく」

日本のビジネス社会で女性が活躍しようとすると、性差別などのいろいろな困難が待ち受けている。そのストレスから体調を崩す人、外資系企業へ転職する人、結婚して家庭に入る人など、女性の能力を十分活用できていないのが現状である。現在成功している女性たちは、男並みに働きながら女性らしさも忘れないという気配りをしているようだ。

〜価値観の共有による経営〜「コーチ」を事例に〜