第3話 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 最終話前半 最終話後半 | |||
1.計数から見た経営 | |||
(1) あらすじ 工場の経営再建を果たせなければ責任を取らされることを知った久保田は、工場再建のためリストラに取り組み始める。まず、仕事以上に従業員が熱中している野球部の休部を久保田は提案する。工場従業員の団結のシンボルである野球部の休部に従業員は大反発。そして、工場の費用の大きな部分を占めている人件費を削減するため、久保田は人員整理を言い出し、誰を辞めさせるかで工場はおおもめする。 (2) 用語解説 a. コスト・マネジメント・・・売上に対して適正な費用に押さえる管理。 b. 労働組合・・・経営者からの様々な圧力から、労働者が団結して自分たちを守るために結成される組織。憲法で組合の結成は保証されている。 c. 労使交渉・・・労働者個人ではなく、労働組合と経営者側が交渉すること。 (3)ドラマのポイント a. 久保田は経営者としての仕事をしっかりやっているか? 1ヶ月しか工場にいないと思っていたときとは異なり、工場を再建できなければ責任を取らされてくびになってしまう。そこで、帳簿を見て、工場の財務状況を分析して再建のための戦略を考えるのは経営者にとっては適切な行動である。しかしながら、経営に関する情報はすべて定量(数値)化されるわけではなく、従業員に関しての情報は面接等で把握していかなければならない。また、経営者としてのビジョンや戦略を従業員に対して積極的に伝え、理解してもらう努力をしなくてはならない。久保田は経営者として自ら従業員にコミュニケーションを取ることで、従業員を把握し、自分の考えを伝える努力をしていない。そのため、彼女が工場再建のために行使するリーダーシップは有効でなく、従業員の支持が得られず独りよがりになってしまう懸念がある。 b. なぜ久保田は恋人の岩佐とのデートで席を立ったのか? 社内恋愛、しかもエリート同士だと単なる恋愛関係だけですまず、利害関係や仕事をめぐる嫉妬も加わり大変である。久保田は岩佐に工場の愚痴をこぼしたりしたかったのかもしれないが、岩佐はそんな彼女に心情を理解しなかった(「ただの女の顔になるなよ」「そうなりたいときもある」)。それに加えて、本社の情報が工場にまったく伝わらないことの苛立ちや孤立感、恋人が憎い長峰と手を組む事(「出世と手を組むんだ」)への怒りもあって席を立ったのかもしれない。
計算してみると間違いであることが判明。固定費はもっと下げなければならず、従業員1人ぐらい整理したところで、他の経費削減をしないと単月黒字化は困難。多分、スタッフの人に会計理論に精通した人がいなかったか、もしくはストーリーの中で重要でないこと計算が面倒だったので概算でやったのでしょう。
d. 誰を解雇するかを会議の場で決めようとした久保田のやり方ははたして良かったか? これは非常にまずい。その理由は3の(6)を参照。
温厚な三国が平手打ちをしたのは、人の首を機械をとりかえるように簡単に切ろうとした久保田へ腹を立てただけでなく、久保田の誤った言動に気がついて欲しかったのかもしれない。組織は人で成り立っているのだから、リーダーは従業員の心情に気を配るべきである。エリート街道を歩んで来た勝ち気な久保田にとって、軽蔑していた男に平手打ちを食らったのは、かなりショックだっただろうな。これをきっかけに久保田は少しづつ変わっていくことになる。ところで、本当に女性は男に殴られるとその男に恋をするのか? |
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2.損益分岐点分析(Break Even Point Analysis) | |||
(1) 損益分岐点…利益が0になる売上高(採算点) (2) 損益分岐点売上高=固定費÷{(売上高-変動費)÷売上高} (3) 九十九里浜水産缶詰株式会社の損益分岐点分析(N.A.) ごめんなさい。うまくワープロソフトを使いこなせず、算式や図が書けませんでした。 (4) 赤字経営←内部要因(人・モノ・金・情報・システム・経営戦略)+外部要因(競争・経済状況) (5) 用語 a.固定費=売上の増減に関係なく発生する費用(正社員の人件費、家賃や地代、減価償却費、金利支払い等) b.変動費=売上の増減に相関して発生する費用(原材料費、パートの人件費等) c.収益性=儲かる程度 d.生産性=生産効率 e.ランニング・コスト=事業運営にかかわる費用 f.従業員1人あたりの収益性=利益÷従業員数 |
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3.リストラ(restructuring) | |||
(1) restructuring…事業の再構築→儲からない事業や業務を整理したり、儲からない事業を儲かるように建て直しすること 1960〜70年代にかけて多数の米国企業は儲かりそうな事業を買収して、無分別な多角化を行い、その結果、経営資源の分散や管理の難しさから収益性が悪化した。そこで、1980年代になってrestructuringを行い、事業の選択と集中を意思決定して収益性を回復した。代表的成功事例はG.Eであろう。
(3) 日本的リストラ=人員削減+経費節減・・・後ろ向きな施策だけの場合が多く、人員削減と同義語として (4) 本来のリストラ方法 a. 不採算業務や事業の洗い出しとその再建計画の立案 b. 業務や事業の取捨選択→何を残し、何を捨てるのか(focusing & selection) c. 止める業務や事業の処理→撤退・外部への売却→配置転換・人員整理(早期退職勧奨や指名解雇) d.新しい成長源の探索 (5) リストラは収益性改善にプラスだが組織の縮小均衡になりやすい→中心事業の強化と新たな成長源の探索を行う
まず、いきなり人員整理を考える必要だったのか?
確かにあまり働いていない従業員も多いし、そうした人員を削減すれば即効的に収益性改善につながる。しかしながら、従業員の気持ちが荒廃して生産性が下がる可能性を否定できない。自分の存在価値をアピールする塩谷、剣ちゃん、たけしの言い争いを聞いていると、せっかくのチームワークの良さが崩れていくことが感じられる。まず、人員削減以外の経費削減を考えるのが普通である。そして、少し時間がかかるが、売上を増加させるマーケティングを考える。もっとも時間的猶予が1ヶ月しか与えられていない久保田にとって、短期間での売上増加は難しいと判断したのかも知れないが。それで駄目ならば、最後の手段として人員削減を考える。その場合も、リストラする側が、従業員の仕事ぶりや能力をしっかり理解して、従業員の心情に配慮して慎重に行わなければならない。もし、久保田がリストラをするならば、工場の現場をよく観察して、無駄がどこにあるのか、しっかり知っておくべきだった。工場の従業員の心情や人間関係を配慮して、事前に退職勧奨の優先順位を決めておき、個別に交渉していくべきであろう。その際は、相手の感情を荒立てないような交渉をしなくてはならない。久保田のように会議形式でリストラを検討すれば、議論が噴出して人員整理対象者を決められないし、みんなの前で不必要な人間という烙印を押すのは酷い。久保田は従業員とコミュニケーションを取っていなかったから、こんな方法を取ったのかもしれないが・・・。「王様のレストラン」における原田のリストラ方法と比較して、経営者として久保田のリストラのやり方は稚拙。 |
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4.日本企業のリストラ | |||
(1) NTT a分割民営化と新規参入(KDDI等の新電電)による競争激化+固定電話の売上が減る(携帯電話に市場を奪われる) b営業所の廃止+人員削減+新規事業(Lモード)+NTT法改正への働きかけ(NTTに関わる規制の緩和) (2) マツダ a石油ショック以降の経営体質の弱さ+販売チャネルの4系列化(ユーノスとオートザムの新設)が重荷 b米フォードから資本導入+米フォード主体の経営再建+車種の整理+フォードとの共同開発+人員削減+部品購買の見直し (3) 日産自動車 a競争力の弱体化(魅力のない新車)+バブル崩壊以降の不景気 b仏ルノー社の資本導入+ルノー社主導による経営+工場閉鎖+人員削減+組織変革+部品購買の見直し+デザイン部門の強化 (4) 三菱自動車 a借入金の増大+競争力の弱体化(売れ筋のミニバンで出遅れ)+バブル崩壊以降の不景気+リコール隠し問題の不正 b独ダイムラー・クライスラー社からの資本導入+経営者交代+人員削減 |
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