〜成功する独立〜

第11話          10 11
1.起業を成功させるために

(1) あらすじ

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? 籐子が貫井企画を辞め、貫井たちの前から去っていったことで、貫井は気持ちに穴が空いたようになる。籐子がいないことで、事務所の仕事に支障がでる。籐子は最終職探しをするが、30歳という年齢から厳しい。お見合いも断られてしまう。
? 楠木文具の新製品「エンピツネズミ」の売れ行きも芳しくなく、楠木文具は廃業することになった。楠木文具で偶然再会した貫井と籐子はデートをすることになった。そのデートの次の日、貫井は経営不振から貫井企画を解散することに決めた。貫井は春菜と別れた。そんなある日、楠木文具に1本の電話が入り・・・
 
(2) ドラマのポイント
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?a 籐子が貫井企画を辞めたことで、貫井企画はどう変わったか?

社長である貫井が元気がなくなり、それが木村や吉武にも悪い影響を与えている。もちろん、彼ら2人も籐子がいなくなったことで寂しさを感じている。また、籐子にはそれなりに細かい仕事があり、事務所の仕事効率が低下する懸念はある。男3人の事務所で籐子のようにクッションなってくれる人がいないため、仕事面で行き詰るとやっかいなことになりそう。
b エンピツネズミが売れず廃業を決めた楠木社長の気持ちを考えよう?

「私は好きでした」と楠木社長は言うものの、この企画は貫井が持ちかけ、当初、楠木は受身であった。しかし、楠木としては廃業も視野に入れていたので、一か八かの賭けに出て敗れた。今はあきらめの心境になっているのであろう。ただ、鉛筆ねずみを出さなければ、会社の資産を減らさず、廃業できたかもしれない。

c なぜ、貫井は会社を解散することに決めたのか?

正直言って、よくわからない。木村の仕事はコンスタントにあるようだし、貫井もヴィーナス広告の指名もあったから、吉武の営業力で今後も仕事があったと思われる。また、広告制作は自宅でできるから事務所を引き払い、各自の人件費もクライアントの収入に応じて支払う成果報酬型にすれば、コストも減り、会社は存続できたはずである。会社を潰した話が広告業界へ伝わると、貫井への仕事が激減する可能性があるから、会社を解散しない形で再建する方法を取ったほうが良いであろう。
d 「手放さなくてもいいものまで手放していいのか?起こる奇跡も起こらなくなるぞ。」

吉武にそう言われて、会社のみならず、大切なパートナーとなりそうな籐子を失わぬように、という気持ちに貫井はなった。
?e エンピツネズミはなぜ突然売れ出したのか?

ブームとはそんなもの。他人の持っていないおもしろいものを持ち、自慢したいという子供の気持ちをつかみ、価格も安いこともあってヒットになったのであろう。ブームになって多くの人がその商品を持つと、とたんに売れなくなる。エンピツネズミで組織が急拡大したであろう楠木文具も、第二のエンピツネズミになるヒット作品がなければ、再び経営危機になる可能性はある。
?f なぜ、籐子は貫井たちに会うのを躊躇したのか?

自ら事務所を辞めた負い目と、貫井に会うとかなわぬ恋心が抑えきれず、自分が傷つくかもしれないから。

?g 貫井企画へ入ったことは籐子にとってどういう意味があったのか?

恋と仕事の両方で自己実現できた。これで彼女の人生は大きく変わった。
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2.成功する起業の条件

???1) 君は起業家の器?

?a 失敗のリスクを取れるか?
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国民金融公庫の調査では、起業1年目で失敗する可能性は会社法人で18%、個人事業で28%。2年目で失敗する可能性は法人で28%、個人事業で31%。すなわち、起業しても2年持たない会社法人が46%、個人事業で6割近くになる。それだけ失敗する可能性が高いので、失敗を許容できるか、失敗しても人生が破滅しないか、などをよく考えてから始める。起業をする人の多くは成功しか想定せずに起業するが、失敗した場合も想定して起業を考えたほうが良い。

b
金銭のみを目的としない?

仕事を辞めて独立した場合、前職よりも給与が下がったり、労働時間が長時間になることもある。起業直後は社長の給与を出せず、自分の貯金を取り崩すこともある。そのため、金銭的欲求だけで起業すると辛いこともある。
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c 成功への執着心

成功する可能性はさほど大きくない。そのため、成功に執着して、経営努力をし続けないと競争に敗れ、廃業せざるをえなくなることもある。
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d 私生活を犠牲にできる

特に起業直後は経営を安定させるため、多大な経営努力が必要である。そのため、私生活をある程度犠牲にして事業へ打ち込んでも良いと割り切れないと厳しい。
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e 幸運を呼び込む力があるか?

経営上の幸運は小さな努力の積み重ねや前向きな姿勢によって生まれる。幸運を呼び込む力も経営者には必要。
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2) 成功する事業の条件
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a 知的財産と認められたアイディアや独自技術を持つ
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知的財産は特許や意匠で保護される。それらを価値の源泉とする商品やサービスの競争優位の持続性は高い。

b
非常に優れた運営方法や完璧を追求する決意

商品やサービスのコンセプトが優れていても、それを実現できる運営力がなければ、絵に描いた餅に終わる。
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c
市場へ最初に参入し、競合他社に先んじる
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先発優位の定説がある。先に市場を押さえると、後発者がその市場状態を覆すのは苦労する。

d 弱者の利点を活かす

弱者であっても、弱者の戦略を使い競争優位を構築できることも多い。弱者ゆえにゲリラ戦など、機動的な戦術も取りうる。
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e
一般に弱みと思われる点を強みに変える

例えば、店舗を少数しか持たないという小売業での弱みを、通販のジャパネットタカタはTVの多チャンネル化というメディアの変化をビジネス機会にして、成長した。

?f 価値があり、その価値で顧客を洗脳できる

洗脳とは言葉が悪いが、商品やサービスの価値を顧客が信奉してくれるようになれば、ブランドが確立し、付加価値を得られる。シャネルブランドを収集するシャネラーと呼ばれる人もいるが、あの人たちはシャネルの価値を信奉したことで、お布施としてシャネルの高価格商品を買い集める。
3.顧客を起業直後に顧客を獲得できるかがポイント
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?1) 顧客をいかに獲得するか
?a 起業前から顧客を確保する

起業直後に顧客へ自社を浸透させるのは大変で、その結果、起業直後に安定した売上を新規顧客からあげていくのは難しい。そこで、望ましいのは、起業前から顧客を確保しておく慎重さも必要である。

?b 低コストの広報・広告をする
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マスコミへの露出、口コミ、など安価な広報活動を考える。メール・マーケティングや掲示板への書き込みは安価であるが、嫌われることのほうが多い。

c
トップセールス、知人からの紹介、口コミetc
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経営者が自ら営業するトップセールスは不可欠。社長が直接営業すると、相手側も比較的会ってくれる。知人からの紹介も大切にしよう。

d
売上があがらないといって安易な値下げをしない
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売上があがらないと、値下げして売上量を増やそうという誘惑に駆られるが、一度値下げすると安売りのイメージがついてしまい、元の値段に戻すのが大変である。また、収益性を圧迫し、ますます、資金繰りが厳しくなるかもしれない。値下げは慎重に考えたほうが良い。

2) 一度顧客にしたら逃さない
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a 細かいことにこだわる

顧客満足は些細なことで左右される。細かいところでも顧客重視を貫くことが、顧客のリピートを生む。
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b
期待以上の満足を提供する
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支払った対価に見合った程度の製品やサービスの価値であると、簡単なきっかけで他社へ逃げられる。期待以上の満足を提供し続けるのは難しいが、最初の段階で期待以上の価値を提供すると、それが潜在意識に刷り込まれ、顧客との関係が継続する可能性は高くなる。

c 顧客と相互作用の関係を形成する

顧客が金を支払い、自社が製品・サービスを提供するだけでなく、コミュニケーションの相互作用、顧客の不満を新製品の開発へ生かすなど、があると、顧客との関係は長続きする。
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d
顧客と同様に社員を大切にする

人が価値を産出するサービス業では、社員が満足していないとサービスの価値が低下する。そのため、社員を大切にすることも、結果として顧客を獲得することにつながる。

4.起業で成功するために
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?1) 起業の準備
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a 思いつきや衝動的に起業しない

アイディアを、金を稼げる計画に落とし込む必要がある。また、準備をしていないと、起業後事業がスムーズに運営できない。貫井のように衝動で会社を辞めると、顧客を得られず、経営に苦しむ。
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b 市場に対して勝手な思い込みはないか
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起業前に事業の見通しを立てると、自分に都合の良いように市場を考えてしまったり、自分の事業アイディアに合わせて市場を捉えてしまう。それは売上計画と売上実績の大きな乖離を生むことになるため、0ベースで市場を考えるか、第三者に自分の市場に対する考えが正しいかチェックしてもらう必要がある。

c 慎重な資金計画
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事業を始めると、予想以上に資金が流出するし、予想以下の収入しか入らないことも多い。そのため、資金計画は固めで考えたほうが良い。

2) 経営資源の調達
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a 初期投資に加えて売上が半年なくてもやっていける資金の準

前述したように、計画通りに事業が進まないほうが多い。そのため、資金の準備はなるべく多いほうが良い。半年間やっても市場開拓による売上確保の目処がたたなければ、戦略を大幅に修正したほうが良い。
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b 苦しい時期を一緒に乗り切っていける仲間

苦しいときに一緒に立ち向かえる仲間がいることは、起業家にとって力強い援軍になる。貫井だって籐子に叱咤激励され、木村と吉武にフォローされなかったら、事務所を早々に畳んでいたであろう。仕事帰りに事務所の仲間とよく酒を飲んでいたが、あれも良いストレス解消になっていたに違いない。
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c 持たざる経営
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利益の捻出に足かせになる固定費を抑えることは重要。貫井企画も、最初は各人の自室を事務所代わりにして、事業を始めていれば、あんなに早く廃業の決断をしなくてすんだであろう。

3) 柔軟な経営
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a ビジョンや理念は変えるな、戦略は柔軟に修正せよ
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ビジョンや理念は変えると会社の根本がぶれてしまう。しかし、戦略は生き残るために柔軟に修正していくことが必要。

b 成功に固執せよ、過去の意思決定に固執するな
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社長はプライドや権威を守るため、部下に一度命令した内容をすぐに変更したがらないことも多い。しかし、目標は成功することであり、その成功のためには過去の意思決定に縛られず、柔軟に意思決定し、行動へ移していくほうが良い。ただし、なぜ、過去の意思決定が失敗したかの検証とフィードバックする必要はあろう。

c 冷静に、かつ楽観的に明るく!

社長が感情的になったり、暗くなると、戦略的意思決定の精度が悪くなったり、部下が精神的に不安定になる。そのため、社長は常に冷静な判断をくだせるように、部下を不安にさせないために明るく行動することが重要である。