〜成功する独立〜

第7話          10 11
1.経営者の夢の実現

(1) あらすじ

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? 貫井企画で初めての給料が出て、給料が下がり愕然とする。吉武から長期契約の大手クライアントを獲得しないと、このままでは倒産すると言われ、吉武が売り込みをかけていたJPNリゾートへ営業をすることになった。接待の結果、JPNリゾートの社長は孫娘をCMに使うことで、年間契約を結ぶことになった。
? しかし、貫井は孫娘を使う広告を好きになれない。しかも、社長から他のクリエイターの作った広告を真似て作って欲しいと言われ、プライドを傷つけられる。やっとふっきれて作った広告を、籐子から「貫井さんらしくない」と言われてしまう。さらにJPNの社長から難題を言われ、とうとう吉武も切れてしまう・・・
(2) ドラマのポイント
?a 広小路製薬の仕事が成功したのになぜ給料は安いのか?
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会社では給料といった人件費だけではなく、家賃、光熱費、接待費(広告業ではクライアントの接待は必須)、雑費などが費用として負担していかなければならない。また、将来の仕事のために内部で留保する資金も考慮する必要がある。そのため、売上=給与とはならない。また、広小路製薬の仕事は単発の新製品発売のキャンペーンであることと、コンペの時に安い料金を提示しことで、料金が安かったのかもしれない。

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 貫井が木村へイトーヨーカ堂の仕事を任せたことで、木村の意欲はどうなるのか?
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広小路製薬の仕事は2人でやっていたため、実績のある貫井がメインで仕事をし、木村はアシスタント的な仕事だったのかもしれない。しかし、木村も若手クリエイターとして期待されている人材ゆえに、尊敬する貫井とはいえその補助的仕事に甘んじていられない。そのため、イトーヨーカ堂の仕事を木村が全権を持ってできる、という貫井の申し出は、木村の仕事への意欲を高めることになったであろう。

c 「それで潰れるのなら本望です」とJPNリゾートの仕事を断る貫井をクリエイターとして、社長としてどう考えるか?

1人でビジネスをやっているのであれば、貫井が会社を潰そうが、生かそうが本人の自己責任。しかし、木村、籐子、吉武といったパートナーの意向をまったく考慮せず、自分の好みだけで会社を潰してもいい、というのは利己的で傲慢である。
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d 「この事務所はおまえ一人のものだと思っているのか?おまえはユニバーサルの一社員だった時とは立場が違う。独立するってのはそれだけの責任を負うってことだ。」という吉武の言葉をどう考えるか。

まさに、その通り。経営者は自分だけでなく、従業員、家族、出資者、顧客への義務と責任を負わなくてはならない。法律的に義務と責任を負うわけではないが、事業を継続させ、安定した経済基盤を作ることに経営者は責任を持って取り組むべきであろう。一般の従業員はその仕事に関してのみ、会社、上司、同僚、顧客へ責任を持たなくてはならない。
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e 木村が作ったイトーヨーカ堂の屋上リニューアル計画をどう思うか?

イトーヨーカ堂は顧客層を30代〜50代の経済志向が強い主婦から若い女性へ変えたいのであろうか?それであれば、木村の計画は的を得ている。イトーヨーカ堂の持つ強みと、それからもたらされるポジショニングを考えると、顧客の年齢層を変えるのはリスキーな戦略であり、木村の計画は現実的には可能性が低いように思える。

?f 貫井や籐子のクリエイターの理想論と、経営を考えた吉武の現実主義、あなたはどちらに賛同するか?

なんのために独立して、起業したのか。自分の作りたい広告を作るというのが、貫井の理由であろう。しかし、自分のやりたい事だけで会社経営が成り立つのは難しく、料金を支払う顧客の意向を無視した広告制作はありえない。そのため、クライアントのニーズに沿いながら、いかに自分のやりたいことを組みこめるかが、クリエイターの実力になる。または、顧客を自分のやりたい広告へ引き寄せる説得をしっかりすべきである。貫井企画が倒産の危機に瀕している状況で、理想論で経営をやっていこうというのは無理があり、まず、会社の経営を安定させた上で、自分のやりたい広告を少しずつ増やしていく戦略を持ったほうが良い。
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g JPN
リゾートの仕事を断った吉武をどう考えるか?
経営的にはJPNリゾートの仕事は、会社の存続を左右しかねない重要な仕事ゆえに、断る断らないの最終判断を吉武が独断で行うのはおかしい。社長である貫井へ相談してから、断るのであれば丁寧に断るべきである。少なくとも自己のプライドを抑えて仕事を成し遂げた、貫井の努力を無駄にしてしまうのでもあるし。また、JPNリゾートと貫井企画が喧嘩別れした、という悪評が立つ懸念があるため、吉武のような「クリエイターをなめてもらっちゃ困る!」とクライアントを怒鳴りつけるのはその場では気持ちが良いかもしれないが、愚の骨頂。ただ、JPNリゾートを断ったのは短期的利益を損なうものの、正しい判断かもしれない。JPNリゾートの広告デザインは、他人の広告の焼き直しであり、あれを世に出していたら貫井の実力に疑念が持たれ、長期的には貫井企画はクリエイターとしてでなく単なる便利な広告屋としてレッテルを貼られてしまうところであった。
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2.起業家の夢、ビジョン、責任

?1) なぜ起業をするのか?

?a自己実現
仕事で自己実現したい人にとっては、仕事の目標が組織から与えられることになるサラリーマンより、自ら仕事の目標を設定できる経営者の方を好むであろう。

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使命感
社会に対してなんらかの使命を果たしたいと考えて起業する人もいる。例えば、地域の介護福祉環境の向上を目的に、企業やNPOの形で介護ビジネスにおいて起業するなどである。

c現状打破
失業し、再就職先がないため、自分で起業する人もいる。また、会社の一部門で事業を行っていたが、会社のリストラで閉鎖されることになったとき、会社から事業を買い取り、独立するケースもある。

2) 起業のチャンス

a新しいビジネスチャンスのゲット
環境の変化が著しい現代では、顧客のニーズが充足されていないようなビジネスのチャンスはいろいろある。そうしたチャンスを見つけて起業すれば、成功する可能性は高い。

b自己成長
経営者になるというのは、いろいろ学ばなくてはならず、また、日々の経営で知らない間に学習していく。それが人間のせいちょうにつながる。

c報酬
起業の理由で、金持ちになりたい、尊敬されたいという報酬面の誘因が一番強いかもしれない。起業家の中には成功してフェラーリに乗りたい、などの夢を語る人もいるが、報酬面だけを意識して起業すると、失敗する可能性が高くなるらしい。理由は、起業の困難さから必ずしもそうした報酬を得られるわけではなく、その結果、途中で挫折するのである。

3) 起業のリスク

aマーケットリスク

顧客を獲得できるか。事前の計画は自分たちにとって都合の良い要因を重視しすぎ、甘くなり勝ちである。そのため、起業直後の会社はマーケットリスクに襲われやすい。

b組織リスク

会社の業績が好調で、創業時のメンバーだけで会社を動かしているときは良いのであるが、業績が低迷しているときは業績低迷の責任や不信といった組織内での葛藤が生じることがある。また、反対に事業が拡大し、人員を増やす、新しいメンバーの組織の統合といった組織リスクを生じさせることもある。

c 財務リスク

経営基盤が脆弱な中小企業は、資金不足という財務リスクとは常に隣り合わせになってしまいがちである。そのため、キャッシュフロー計画は慎重に作成し、常に注意しておく必要がある。

4) 起業の責任
a 出資者・・・出資者はリスクを負って投資をしているので、情報公開による経営の透明化などの責任を経営者は負わなくてはならない。

b 従業員・・・新しく起業された中小企業へリスクを取って参加する従業員に対しても、経営者は責任を感じ、従業員の給与は優先して出すべきであろう。

c 家族・・・起業は家族の支援があって成功することも多い。そのため、家族にも会社の現状を報告するなどをしておくべきであろう。

d 顧客・・・会社が倒産したら、せっかく顧客になってくれた人たちも困る。そのため、事業を安定して継続していく責任を経営者は感じなくてはならない。

3.ビジネスプランとは?
1) 事業の計画

起業する前に、自分のビジネスがどうしていくか、どうなっていくかを計画書という形にして、事業開始後のガイドラインにしておく。また、ビジネスプランは出資を募ったり、融資を受けるときに説得するための必要不可欠な材料でもある。

(2) ビジネスプランの意味〜自分の考えを整理する

a 様々なアイディアを整理し、体系立てる

?b 体系立てて記述することで、事業アイディアの不足している部分や誤りを見つける。

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実行の時のガイドブックになる

(3) ビジネスプランの意味〜他人に自分の考えを伝える

a 一緒に働く仲間を集めるための説得材料

?b 出資者を集めるときの説得材料

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取引先を説得するときの材料


4) ビジネスプラン作成のポイント
a 詳細なビジネスプランが必要?
事業を進める上でのガイドラインとして作る場合は、詳細なものでなくても良い。実際にビジネスを始めてみると、ビジネスプラント乖離することが多いからだ。正確なビジネスプランを作るよりも、ビジネスプランと乖離したり、想定していなかった事態が出てきたときに、進むべき方向を間違えないようにするための、ガイドラインとして機能するものの法が良い。ただし、出資や融資を受けるためであれば、詳細なビジネスプランを用意しておいたほうが良い。

b わかりやすいビジネスプラン
自分以外の人に見せる機会があるビジネスプランは、読み手が前提知識を持たない場合があるため、難解な用語には注釈を付けるなど理解しやすいものにする。

c 理論的矛盾を潰せ
事業の計画が体系だてられて書かれているため、矛盾点もすぐにわかる。例えば、市場動向がネガティブなのに、説得力のある戦略なしに業績だけは良いなど。そうした矛盾点を洗い出し、潰していくプロセスで、起業家は適応能力をやしなっていける。

d ビジネスプラン自体を目的化しない
ビジネスプランはあくまでも事業を成功させるための指針になればよい。より完成度の高いビジネスプランを作ることが目的ではない。
4.ビジネスプランの内容
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?1) サマリー
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ビジネスプランの概要を冒頭に記述する。

2) 事業の使命、ビジョン、目標


なぜ、この事業を始めるのか。将来はどういうようにビジネスをしていきたいのか。そのための、短期、中期、長期の目標を記述する。
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3) ビジネスモデル、ビジネスシステム

商売の仕組み。ここは非常に大切。ダメなビジネスプランはどこで利益がでるのか、本当に利益が生み出せるのか、が明確でないことが多い。
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4) 経営戦略(市場、製品、事業、企業)
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実際に商売の仕組みができても、競争がある市場では目論見どおり利益を上げるのは難しい。実際に経営資源を使って、どう利益をあげていくか、その道筋を経営戦略で明らかにしておく。

5) 組織(経営者、経営陣、従業員)
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ビジネスを始めるにあたり、誰が担うのか、その人たちにビジネスを遂行する能力があるのか、今後必要になる人材を明確にしておく。

6) 財務状況および予測
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ビジネスのビジネスの成果は、財務結果で評価される。また、経営を行っていくうえで財務情報が必要不可欠ゆえに、その目標値としての財務予測は重要である。

7) 補足資料
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ビジネスプランの納得性を

8) 出資要件

出資や融資を募る場合、契約ゆえにその条件を記述しておく必要がある。

5.起業計画のチェック
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?1) 事業収益性の妥当性
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a 売上確保
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往々にして売上は希望的観測が入り、甘くなり勝ち。確実な線での売上計画を考えたほうが良い。

b 利益計画
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売上が決まり、コスト構造がある程度分析されていれば、利益は自動的に出てくる。利益がでるものの、資金繰りを圧迫するケースもあるから、利益が出るからといって安心してはならない。気をつけなくてはならないのは、事前の予想より支出はいろいろ出てきてしまうこと。

2) 経営資源の調達計画

?a 必要とする経営資源の質と量

b 準備できる経営資源の質と量
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c ギャップの解消方法
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ギャップ解消を経営戦略に組み込ん論じなくてはならない。

3) 経営資源の管理計画

?a 資金計画

資金繰りに失敗すると、企業は破綻する。そのため、資金の流出入を事前に予測し、現金残高がマイナスにならないように、ビジネスのスケジュールを考えなくてはならない。
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b 営業計画
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資金計画の裏づけになるのが営業計画である。具体的に、どの顧客に対してどれだけの売上をあげていくか、見積もってみる。

c 生産計画

営業計画に基づき、生産計画を立てる。生産計画はあくまでも営業計画に基づいたものでなくてはならない。また、営業動向によって、生産計画を変えられる柔軟性の確保は重要である。見込みで生産することはなるべく避ける。起業直後は経営が脆弱で、在庫の増加が経営に大きなダメージを与えるからである。
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d 人の採用と管理
最近の高失業率は優秀な人材を低賃金で雇用できる状況を生み出しているが、起業直後は、厳しい労働条件でなかなか優秀な人材を採用するのは難しい。そこで、起業前から知人などに当たりをつけ、優秀な人材を確保しておく必要があろう。