〜成功する独立〜

第8話          10 11
1.居場所探し

(1) あらすじ

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? JPNリゾートの仕事を断った貫井は、仕事がなくなり、いらいらする。一方、木村はイトーヨーカ堂の屋上のリニューアルで忙しく、籐子は楠木文具の会社案内を制作する仕事を任された。そんな時、籐子が25歳のときにプロポーズを断った春菜の兄、倉持勇祐が帰国し、会いたいと言われダイエットを始める。
 ?仕事がなくていらいらしているのに加え、籐子が元彼とデートすることをおもしろくない貫井。そして、勇祐から再度、プロポーズされる籐子。籐子も貫井も複雑な気持ちであるが、籐子は貫井から「お前の好きな場所で好きな奴と一緒にいればいい。俺たちはそれを望んでるから。自分の幸せだけを考えろ。」といわれ、ついに決心する・・・
(2) ドラマのポイント

?a 部下が仕事をしていて、社長に仕事がない状態を、貫井はどう思っているのだろうか?
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会社の経営が傾きかけている状態で、社長と言う最高責任者が仕事をしていないのは、社長自身が責任を果たしていないという気持ちになって後ろめたいであろう。また、クリエイターというプロとしても仕事を取れないないことは実力がないからという辛い気持ちになろう。それゆえに、美容室のDMという小さな仕事でも積極的にやってしまうのである。ところで、小さな美容室はどうして貫井企画を知ったのだろうか?

b
 元彼からプロポーズされた籐子の心境を考えよう。そして、なぜ、籐子は勇祐のプロポーズを断ったのか?

プロポーズされたときの籐子の表情やその後の出来事を忘れているという状況からすると、驚いた、というのが偽らざる気持ちであろう。しかし、籐子が即答しなかったというのは、仕事や貫井への想いというものがあって、彼女にとって勇祐はもう過去の人なのだろう。ただ、貫井が籐子に対して、「とっとと結婚してしまえ」という心無い言葉を投げつけたことや、きわめて現実的な真希の言葉から、籐子は断る決心もなかなかつかなかったのであろう。最後は貫井の「お前の好きな場所で好きな奴と一緒にいればいい。俺たちはそれを望んでるから。自分の幸せだけを考えろ。」と言われ、自分の気持ちにふんぎりがついた。今、自分が好きなのは貫井であり、その彼と一緒に好きな仕事をし続けたい。貫井と貫井企画にとって、自分が事務所へ残ったほうが良い。ただ、こうした結論から勇祐のプロポーズを断ったことは、彼女にとっても大きな賭けであり、過去との決別であり、それが彼女が涙を流していた理由であろう。
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c 籐子が勇祐からプロポーズされたことに対して貫井はどう思っているのだろうか
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おもしろくない。貫井は否定するかもしれないが、この時点で籐子へは好意を持っている。付き合いたいとかそういうのではなく、毎日、顔を合わせ、仕事を一緒にするのが彼にとっても当たり前の日常になっている。そうした良い環境を壊すことになる勇祐の出現は、男としても社長としても望ましいことではない。

d 籐子にとって貫井企画はどういう意味の場所なのか?
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彼女の自己実現、好きな人と良い仲間と一緒に仕事ができる、を提供してくれる場所なのである。そのため、彼女は貫井企画で働きたいという強い欲求を持つことになる。

g 貫井企画のメンバーにとって籐子はどんな存在か?

貫井企画の3人の男たちは、かっては大企業で働いていた。そのため、雑用を専用にやってくれる人が別におり、雑用を自らやったことがなく、籐子のような存在は不可欠である。また、「ひょっとしたら彼女は拾い物だったかもしれないな」という吉武の言葉に見られるように、3人の男たちの潤滑油になったり、支えになったりしている。そのため、貫井企画で必要不可欠な存在になりつつあったと考えられる。

2.夢・ビジョン・ライフプラン

?1) 夢

?a私生活での夢

b
キャリアでの夢

c夢から導き出されるのが短期と長期の目標である。その目標を実現するための方法論がプランになる。

2) ライフプラン

aキャリアプラン

b私生活のプラン

c人間が生きていくには金がなくてはならない。そのため、資金プランを考えると、自分が今後何をすべきかという判断材料になる。

3) 漂う若者

a仕事

起業の人件費削減の動きから給与が高い正社員を抑制し、アルバイト社員を増加させていることから、正社員として安定した環境で仕事をできない若者が増加している。

b経済力

経済的には若者は恵まれている。アルバイトをすれば困らない程度の生活もできる。親元で生活していれば、経済的支援を受けられる。そうなると、経済的理由で働こうという誘因が弱くなる。

c私生活

何かに夢を持って生きているのではなく、その日暮しの若者が増えている。

4) 自分の居場所を探す

かってのように、家庭、会社、学校が若者にとって居場所にならなくなっている。

3.会社へなぜ所属し続けるか?
??1) 組織帰属の誘因

a組織目的と個人目的の近似性
人間誰しも自分の目的を達成することへは、強く動機づけされる。そのため、組織の持つ目的が、組織へ参加する個人の目的が近いと、個人の目的を達成するため頑張った結果、それが組織の目的達成へ貢献することになる。そして、組織の目的達成から誘因としての対価を獲得し、それが組織へ帰属することを動機づけする。このドラマでの籐子の個人目的は、尊敬する貫井の近くでやりたい仕事をしたいというのであるならば、貫井企画の目的とは近く、それが貫井企画にとどまる誘因になる。

b欲求を満足させる
個人の求める欲求が満足できる程度に満たされる組織へ帰属し続ける。籐子の自己実現欲求はユニバーサル広告では満たされず、積極的な満足を得られなかった。貫井企画は不満を抑制する衛生要因自体が十分満たされているとはいえないものの、自己実現欲求という動機づけ要因が満たされており、それが貫井企画にとどまる理由になる。

c組織からの誘因≧組織への貢献
?自分が組織へ貢献するよりも、組織から誘因、人によっては給与であったり自己実現欲求の追及機会、が多い場合、組織へ所属し続ける、という経営学者バーナードの組織内部均衡の理論。この式と反対に、一生懸命働いて組織へ貢献したいるのに、給料が安い場合、転職を考えることになるかもしれない。

2) 帰属意識の高いメンバーからなる組織
a メリット
帰属意識が高く、メンバーが組織へ所属し続けるメリットは、個人の学習結果が組織に蓄積されやすいということである。サービス業などでは、古くからの顧客を安心させることにもなる。また、組織への帰属意識の高いメンバーが多いほど、組織維持のための動機づけが強くなり、組織目的の達成意欲が高まる。その結果、組織成果が高くなる。

b デメリット
デメリットとして、組織目的と個人目的が連動していない場合、組織の成果が停滞する可能性がある。例えば、仕事が楽で給料が高い職場から転職者が少ないものの、その職場は楽して稼ごうという人々が多くなり、結果として組織の成果はあがらなくなる。また、新しい情報が組織にもたらされないと、革新が生じにくく、組織が停滞する。

(3) 帰属意識を高めるマネジメント
a小集団化
人数が少ない組織ゆえに、組織の活動へ参画しやすく、組織への一体感を情勢できる。

b組織目的への合意促進
組織目的を受け入れられていればいるほど、メンバーの組織へ帰属と貢献が図られる。

c組織からの経済的・精神的報酬を高める
バーナードの公式の左辺、誘因を高めることで、組織メンバーの組織へ所属する満足感を高める。

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組織からの離脱コストを高める
組織を辞めて、他の組織へ移る時のコストを高い状態にする。例えば、他の組織が支払えないような高い給与を支払うことで、経済的に他の組織へ移動する気持ちをなくさせる。プロ野球でジャイアンツを自らの意思で辞める選手が少ないのは、ジャイアンツを辞めることで失うもの(離脱コスト)が多いからであろう。ところで、中高年の場合、会社を辞めても転職や再就職が困難なため、今勤めている会社へ残ろうとする気持ちが強い。そのため、会社が中高年者を辞めさせようとすると、割り増し退職金を与えるなど、誘因を多くする施策を取る。いわば、組織からの離脱コストを低めるのである。
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e他組織と競争する
組織外に戦う相手がいると、組織へのコミットメントが強くなり、組織への帰属意識も強くなる。国家レベルの話では、戦争が起こると国内が安定するが、それが組織レベルでも生じる。

f 組織を孤立させる
その組織に帰属する以外の選択肢がなければ、その組織へ帰属するしかない。また、孤立していると、組織内でのコミュニケーションが活発化し、また、自分たちは他の組織の人たちとは違うという意識をメンバーに与え、結束させる効果もある。例えば、カルト宗教が人里離れた場所に信者を集めて集団生活を行うことが多いのは、この理由。

4) 公式組織と非公式組織への帰属
組織には正式に認められた権限関係を基盤にした公式組織と、そうでない、非公式組織がある。非公式組織の代表例としては、政党(会社)の中の派閥がある。非公式組織への帰属意識が強いと、公式組織と非公式組織の利害対立があった場合、公式組織の目的を阻害することもありえる。例えば、自民党は派閥の力が強く、その結果、派閥の意向が自民党政治を疎外することも出てくる。

4.部下のコミットメントを引き出す
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?1) コミットメントとは?

仕事の目標を責任もって達成するための貢献。

?2) 会社へのコミットメントを引き出すには?

a目標の理解と共有

組織の目標を達成する意識がコミットメントの第一歩であるから、組織メンバーに組織の目標を理解し、共有してもらわなくてはならない。

b 権限委譲(Enpowerment

権限委譲は仕事をスムーズに行ううえでも重要であり、権限の行使という人間の欲求を満たすことでの仕事の目標達成に対する動機づけにつながる。

c サポート

目標を与え、権限を与え、さあ、やれというのであれば、無責任だ、という不満をもたれる。そこで、仕事をしていく過程で必要とされる支援を行うことが、動機づけにもなるし、実際の仕事の達成を助けることになる。

d 評価とフィードバック

成果に対しては構成の評価と、そこから個人の成長を促すフィードバックが、次のコミットメントを引き出す誘引になる。

3 適切な動機づけ

個人の欲求は多様であり、なにが誘因なのか、仕事の成果と誘因を結びつける管理が必要になる。

4) 信頼をベースにした経営者と従業員の関係形成
コミットメントは、上司と部下の間で信頼関係の上に機能する。
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