〜地域を変えるコミュニティビジネス〜
最終話 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 |
||
1.地域を変えるコミュニティビジネス | ||
(1) あらすじ 龍錦を使った1号タンクの酒ができるが、あきらかに失敗であった。山田杜氏の体力的限界から、夏子の父は杜氏の引退を宣告する。しかし、夏子はあくまでも山田杜氏と一緒に日本一の酒を造りたいと願い、蔵人と共に杜氏の復帰を求め、今年限りということで願いを聞き入れてもらう。しかし、山田杜氏の体力を考え、2号タンクを山田杜氏が、3号タンクを草壁が杜氏を務めることになった。そして、山田杜氏が造りあげた2号タンクの酒ができ、その味にみな感激をする。ただ、夏子だけは自分の思い描いた酒ではないため、心から喜んでいなかった。そして、草壁が杜氏を務めた3号タンクの酒ができあがる… (2) ドラマのポイント a なぜ、夏子はあくまでも病気の山田杜氏と一緒に酒を造りたいと言ったのか? 最初は病気を心配し、山田杜氏を龍錦による酒造りから外そうとした。しかしながら、山田杜氏がいなければ酒造りはできない。夢を実現したい夏子は悩んだ結果、杜氏の病気をだまっていた。山田杜氏が倒れて、佐伯社長は山田杜氏の体を考え、杜氏を故郷へ帰そうとしたが、夏子は杜氏と一緒でなければ兄の託した夢は実現できないと考え、山田杜氏と最後の仕事をしたくて引き留めた。一方、杜氏も2度と酒造りができないことを知っているため酒造りを続けることを望んでおり、夏子は山田杜氏の気持ちを大切にした。 b 夏子にとっての兄はどのような意味を持っているのか? 夏子が苦しい思いをする場面や悩む場面で、必ず兄康夫の面影が浮かび、兄がしてくれたであろう励ましや助言を自分で想像して、自らの進むべき道を確認している。彼女のこうした心理状況を考えると、夏子にとって最愛の兄だけではなく、メンターであり、パートナーであると考えられる。 c 夏子は心から満足しきれていない山田杜氏の酒を認めようとしたのか? 山田杜氏の造った酒は他の人は満足しており、夏子も良い酒であることは認めている。でも、自分の描いた夏子の酒ではない。しかし、それを言えば、命を賭けて最後の酒を造ってくれた杜氏を否定することになる。杜氏が「ありがとう。あのとき、帰っていたら後悔だけが残っていた。夏子のおかげだ。」と夏子に言い、心優しい夏子は兄の夢を実現した酒ではないことを杜氏に言うことができず、悩んだ。自分が妥協すれば、杜氏を始めとして周囲のみんなが幸せのままでいられる。そこで、彼女は杜氏の酒を認めたのである。 d なぜ、草壁は夏子の求める酒を造り得たのか? 兄康夫は「お日様の光に輝く、七色の酒」というのは、女として輝いている夏子をイメージした言葉であったと思う。夏子もそれを自覚し、彼女の心の中でイメージに合った酒の味を決めていた。杜氏は七色に輝く酒を、酒造りの職人としてイメージし、酒を作り上げた。そして、夏子のような酒を、自分の孫娘のように捉えているイメージで作り上げた。一方、草壁は太陽のように明るく、光り輝く一人の女として夏子を見つめ、夏子をイメージした酒を一人の男として作り上げた。それゆえに、草壁の酒は康夫のコンセプトに忠実であり、夏子が求めていた酒になったのである。 e 父と夏子の関係を考えてみよう 父は当初、親として夏子にやりたいことをさせようとしていた。そのため、父として夏子の行動を支援していた。しかしながら、夏子を専務にしてからは、父は経営者として夏子に自由裁量権を与え、新製品開発を行う支援している。そして、最後の宴会の席で夏子に酒を勧められた父は、反対に夏子へ杯を渡した。父はもっとも苦労して成功に導いた夏子を称えると共に、夏子を1人前の事業家と認めたからではないかと思った。 f 康龍ができあがる過程で、地域が、佐伯酒造が、どう変化したか? 夏子の龍錦作りと康龍の製品開発は、地域起こしの変革と言って良いであろう。不満がありながらも現状に甘んじ、何も変わろうとしない地域が、龍錦作りという新しいビジョンの下で、やりがいを再び得て、挑戦する気持ちを持った。そして、龍錦作りによって収入も増えたと思われる。康龍が製品化される過程では、新しい経営者夏子の誕生、杜氏の世代交代、起業家精神、挑戦心、妥協をしないプロ意識といった新しい組織文化が生成され、そして何よりも全国で販売できる康龍という酒を手に入れた。そして、夏子によって龍錦栽培を教えて貰った地域の人も、今までのように佐伯酒造への単なる原料供給業者ではなく、誇りを持てる酒造りの一端を担っているという協働意識を持ち始めたと考えられる。和醸良酒は蔵だけでなく、地域社会と佐伯酒造との関係でも成立するようになった。 g 今後、この村や佐伯酒造の未来はどうなるであろうか? 常に変化し、新しいことに挑戦していく精神を持ち続ける限り、この村や佐伯酒造は進化し続けるであろう。ただし、龍錦の栽培と康龍の生産化という成功を収め、それに安住してしまうと人の意識や組織文化が陳腐化し、再び沈滞してしまう可能性はあろう。自分たちの成功を否定し、革新を起こすリーダーシップを夏子には求められている。 |
||
2.組織と地域の変革 | ||
(1) 変革の3ステップ 新しい環境→組織・地域改革への起爆剤→Step1
メンバーの改革への認識 (2) 組織・地域の変革 a. 業務や組織のシステムだけではなく7S で組織・地域の変革が可能になる b. 新しい知識を創造することで革新を起こし組織・地域を変革する c. 革新による組織・地域の変革で組織・地域は成長し進化していく d. 挑戦心に富んだ優れた組織・地域文化は組織・地域変革を生じやすくする e. 変革のためには強力なリーダーシップが必要 (3) 変革の種類 a 漸次的進化過程:有効性と能率を達成して安定的に均衡している状態でも、希求水準の上昇や環境変化から漸次的進化する。 例:地域の人から美味しいと認められている「月の露」も売れ行きが伸び悩みに対して、毎年よりよい味にしようと蔵人は研究していく。 b 革新的変革過程:危機への直面から組織・地域の均衡を打ち破り、不連続な変化によって環境へ適応していく。 例:龍錦という新しい米を栽培することから始め、全く新しい酒を造る。 (4) 7Sにおける革新から組織・地域を変革する a ハードのS:Strategy, Structure, System ・龍錦を使った新しい酒の開発(製品戦略面での革新) ・山田杜氏を中心とした組織から、山田杜氏と草壁杜氏の2チームによる酒造り(新しい組織構造の創造による革新) ・原材料である米作りから関与する調達(業務システムにおける革新) b ソフトのS:Shared Values, Staff, Skill, Style ・龍錦と康龍の成功による起業家精神に富んだ新しい文化の創造(組織・地域文化における革新) ・草壁の杜氏としての能力向上(人材の革新) ・地域と佐伯酒造の和が強まる(組織・地域能力における革新) ・夏子へ経営のリーダーシップが移る(経営スタイルの革新) (5) 変革できる組織・地域、変革できない組織・地域 a 変革を好むリーダー、メンバー、組織文化・地域文化の存在 b 変革の阻害要因は埋没コスト、慣性、戦略的近視眼、失敗の否定 ・埋没コスト・・・これまでに確立した米作りの方法論を捨てたくない。 ・慣性・・・使い慣れた酵母を龍錦へ使う。 ・戦略的近視眼・・・新しい米作りのリスクを取るより、今の米を作っていた方が収入を得られる。 ・失敗の否定・・・龍錦へチャレンジして失敗し、隣近所の笑いものになりたくない。 (6) 新しい知識を創造することで革新を起こし組織・地域を変革する (7) 進化する組織・地域 a. メンバーの成長と共に組織・地域も成長 b. 組織・地域の進化は組織・地域の革新を源にする c. 文化の保守化は組織・地域の進化を阻害する (8) 進化する組織・地域を創る a. ダブル・ループ学習…今までのやり方自体を見直し学び直す→常識にとらわれていると進歩がない b. 最小必要限定性…あいまいな部分を残しておく→個人の創造力を発揮する余地を残す c. 機能冗長性…互いの仕事を手伝える余分な能力をメンバーが持つ→組織では助け合いが重要。そこから新しいことが生まれる。 d. 最小有効多様性…少数精鋭かつ多様的な能力を持った人材→みんな組織に貢献できる機会を持つ。そして、多様な能力は環境の適応力を高める。 |
||
3.変革のリーダーシップ | ||
(1) 変革の伝播経路 a トップダウン・イニシアチブ型 例:康夫が経営者として変革を始めた。 b ボトムアップ・イニシアチブ型 例:田舎へ帰った夏子が一人で変革の運動を始める。 c アップ&ダウンによるポジティブ・フィードバック型 例:経営トップの動きにすぐ中間管理職が呼応し、それが経営トップの自信を深めさせ、変革への動きを助長する。 (2) 創造的破壊 a 新しいビジョンの創造による変革への誘因 b 過去と決別するための、陳腐化した7Sの破壊と人の意識改革 (3) 変革への動機付け a 成功体験を初期の段階で味合わせる 例:龍錦の稲穂が成功体験になり、源さんが夏子の変革ビジョンに賛同する。 b 自己実現欲求と変革を結びつける 例:幻の米龍錦を作ることが農民としてのやりがいをもたせ、それが地域社会の変革へつながる。 (4) 変革し続け、進化する組織への体質改善 (5) 変革のリーダーとしての資質と能力 a. 明るい性格:いつも明るい夏子は人を惹きつけた。 b. 心身のタフさ:自分一人で龍錦を栽培した。 c. 起業家精神・管理能力・リーダーシップ能力 |
||
4.コミュニティビジネスの経営 | ||
(1) リスクをなるべく取らず、身の丈にあった経営を行う。 (2) 事業体のことだけでなく、地域社会への貢献を念頭に経営を行う。 (3) 不足する経営資源を地域のネットワークから調達する。 (4) 地域社会から感謝され、反対に地域社会の支援を受けるような、相互扶助的な関係を形成できるよう努力する。 (5) 資金繰りには気をつける。 (6) ビジネスを通じて人を元気にしていく。 |
||