〜地域を変えるコミュニティビジネス〜

第4話          10 11
1.プロジェクトとリーダーシップ

(1) あらすじ

佐伯家が借りている田の持ち主である吉田さんから龍錦の栽培を止めてくれ、と言われ、龍錦の栽培する場所を探すことになる。龍錦は農薬を使えない品種のため、害虫の被害を恐れる農家から貸してもらえない。夏子に対していじわるな冴子は、なぜか自分の家が持つ荒れ果てた休耕地を使っても良いと言い、龍錦栽培の道が開ける。農作業の経験を持たない夏子は一人で荒れた田を耕すが、遅々として農作業は進まない。そして、夏子は過労によって倒れてしまう。

(2) ドラマのポイント

a. なぜ、夏子に対して冷ややかな冴子が、自分の家の休耕地を使って良いと言ったのか?

お嬢さんのお遊びだと思っていたのが、龍錦の芽が出たことで、夏子に荒れた田を貸すことでさらに試してみたいといういじわるな気持ちと、彼女自身が何かを変えたいから夏子に賭けてみたい気持で田を貸す気になったのだろう。

b. 実家に帰らなかった草壁の心情を理解しよう

草壁は複雑な家庭事情があって帰郷したくない気持ちがあったのと、龍錦の行く末を見守りたいという気持ちから残ったのだと思われる。

c. 口ではいろいろ言いながら、なぜ夏子を助けようとする人たちが増えてきたのか?彼らの気持ちは?

幻の米「龍錦」を使って日本一の酒を造る、という夢は、兄が亡くなった後に義姉和子や父が受け継いでやろうと相談するくらい魅力のあるものであった。しかしながら、龍錦の栽培は困難なのであきらめ、夏子が龍錦を栽培すると言ったときも、そのうちあきらめるだろうと考えていた。しかしながら、夏子が純粋に兄の残した夢に向かってひたむきに努力する姿は周囲の人に対する強力な説得になり、父や和子の気持ちは変わり、そして、当初は冷ややかであった草壁も夢の実現に力を貸したいと思うようになっていった。また、夏子の前向きで純粋な人間性と孤軍奮闘する姿勢は荒木や陣吉の支援を引き出し、積極的なコミュニケーションは源さんからの協力を得られるようにした。そして、龍錦が芽を出し、不可能と思っていた夢の実現に可能性が見えたとき、既に支援していた人に加えて、冴子の気持ちすら変えて、田を貸す気持ちにさせた。夢が夏子個人の夢だけにとどまらず、皆のそれぞれの想いが加わって、夢の支援の輪が広がった。夏子自体も、自分一人で夢を叶えるという頑なな姿勢を棄てたことで、周囲の人は夏子を支援しやすくなったと思われる。

d. 冴子は金を受け取った母をなぜ怒ったのか?

冴子は夏子の純粋な夢を試したいという気持ちがあって田を貸したのに、母が金を受け取ったことで冴子の意図がねじ曲げられたから。また、金を受け取ることで、夏子に負い目を感じることになったから。

e. なぜ、夏子は頑なに自分一人で龍錦を育てようとしているのか?

最初は草壁や冴子らが、夏子に何ができるというという態度であったので、意固地になって一人でやろうとした。また、実現困難な自分の夢に他人を巻き込みたくはないという責任感もあったのであろう。

f. 夏子が倒れて、彼女の意識はどう変化したか?

自分一人では夢を実現できないと認識し、夢の実現のためには支援者の好意を素直に受け入れようという気になった。

g. 夏子と草壁の関係はどう変化したか?

最初は夏子の行動をお嬢さんの気まぐれと思っていたが、夏子の夢を追求する真剣な姿勢を見て、以前から夢の実現を願っていた草壁は手伝う気になった。また、夏子を深く知るようになってきて、夏子に対して好意をも持つようになっている。

h. なぜ、兄嫁を田植えに誘ったのか?

龍錦の栽培は兄が命を賭けてまでも達成したかった夢である。その兄を夏子と同様に愛していた和子と一緒に、龍錦の田植えという夢の実現への第一歩を踏み出したかったのであろう。田植えをしながら、和子は亡き夫を思い、夏子は亡き兄を思っていたに違いない。

2.プロジェクト管理

@ 最終的な目標を設定する

プロジェクトは目標が先にあって、それを期間限定で達成するために、一時的事業組織を作る。恒久的に目標達成が求められる場合は、通常の組織で行われる。

A 最終目的に到達するまでのスケジュールを考える

プロジェクトは期間限定で目標を遂行する組織ゆえに、目標達成までのおおよそのスケジュールを事前に考えておく。また、プロジェクトに対するリスクの可能性も予想しておく。

B プロジェクトに必要な経営資源の獲得計画を立てる

プロジェクトの目標達成のために必要な経営資源、ヒト、モノ、金、情報をどのようにして調達するかを、スケジュールと合わせて考えていく。

C プロジェクト・ファイナンス

プロジェクトを運営していくための資金、プロジェクト進行中の資金の流れ、プロジェクトへ投下される資本に対する利益を事前にシミュレートして、資金調達を行う。

D プロジェクトに必要な経営資源を獲得する

プロジェクト開始前に、ある程度必要な経営資源を獲得しておく。

E プロジェクト実行組織の編成

プロジェクトに必要な人材を集め、プロジェクト・チームを編成する。プロジェクトの目標達成のために必要な能力を持った人材が集められる。

F プロジェクトを実行する

プロジェクト実行に関しては、一時的に集まった人間の集団を管理するプロジェクト・リーダーの能力によって影響がある。

G 実行の結果をフィードバックする

プロジェクトが進行中に、絶えず実行の結果を検証し、プロジェクトの修正を図って効率的な目標達成を追求する。

H プロジェクトリーダーの役割

a プロジェクトの目標達成

夏子は日本一の酒を造る目標を設定。その下位目標として龍錦の栽培が設定され、それを達成することが夏子にとって当面の目標となる。

b 妨害や雑音の排除

龍錦栽培を中止させようという動きから逃れ、栽培に関する様々な技術的問題を解決することも夏子の仕事になる。

3.女性のリーダー

@ 女性リーダーの特質

a人間関係を重視

男性は仕事中心で人を使い、女性は人間関係を活かして仕事をしていく。

b相手のニーズに応えようとする

相手の心情を理解しながら、人を使おうとする。

c直接的コミュニケーションを取るのを好む

対話やメールなどでのコミュニケーションを取りながら仕事を進める。

d社外に複雑な人間関係を持つ

社内の人間関係は男性中心の職場では形成するのも難しいため、社外の女性を中心とした人間関係を形成していくことが多い。

A 女性の特性を活かすか、男性のように働くか?

B 男性部下の使い方

年下の男性部下は比較的使いやすい。年上の男性は年上のプライド、男性としてのプライドに配慮しつつ使いこなす。

C 上司の使い方

女性のリーダーに対して好意的か好意的でないかを見極める。上司を立てる形で仕事を進めていくことで、摩擦を減らす。

D モデルやメンターを探そう

自分のキャリアの目標になるような女性リーダーや、コーチ役としてアドバイスしてくれる男性と女性を見つける。

4.支援の輪を広げるために

@ 一人でできること、一人ではできないこと

夏子が一人で龍錦の栽培全部をできないので、夢を共有できて一緒に龍錦栽培をしてくれる人を捜さないとならない。

A 夏子のプロジェクトは協働システムとして成立していない

B メンター=コーチ的役割を負った支援者

C メンターの役割と重要性

D 誰が夏子のメンターか?

源さん・・・龍錦栽培のコーチ役。 父・・・夏子の変革者としての成長をフォローするコーチ役。

E サポーター=プロジェクトに賛同し、協力する支援者

荒木、草壁、姉の和子、陣吉、慎吾が夏子のサポーター。冴子はサポーターなのか?

F 支援の輪を広げるには

a 魅力あるビジョンと誘因の提示

日本一の酒造り、付加価値の高い幻の米の生産

b 説得

積極的なコミュニケーションを取り、自分のビジョンや夢を訴え、そして相手に対しての誘因を高める。

c 実績を示す

成功の実績を見ると、人は気持ちが変わる。論より証拠。