〜競争の戦略〜

中小スーパーの経営     
1.学習目的
映画「スーパーの女」で、中小の食料品スーパーの経営を学んだ。この映画はサミットという首都圏で営業するスーパーの経営者が監修しているため、現実の経営手法が良く描かれていた。そこで、もう少し現実のスーパーに関する勝ち残る経営手法を紹介したい。
2.事例:相鉄線の希望ヶ丘駅前スーパー戦争」
(1) 横浜市希望が丘駅近辺の競争

横浜市の新興住宅地である希望ヶ丘駅前には4店のスーパーがある。その中の「つるかめらんど」と「相鉄ローゼン」2店の競争を考える。

(2) つるかめらんどの競争戦略低コスト集中・低価格戦略

a 激安スーパーチェーンのシー・トゥ・ネットワークの直営店。

b 賞味期限切れ近い商品の仕入れによる激安目玉商品。

c 他社の価格調査を欠かさない。売場責任者へ権限を委譲し、他店の価格へ柔軟に、徹底して勝負させる。

d 他店には絶対負けない値付け〜NO.1追求。価格ではどこよりも安いというイメージを確立して、それを武器にし、勝ち残りを図る。

e 価格の高い有名ブランドよりも安い値づけが可能な無名ブランドを中心とした品揃え。

f 大量仕入れや、在庫処分の販路として問屋やメーカーへの交渉力を強める。

g 徹底した低コストの店舗運営。そのため、煩雑なディスプレーと、商品をアピールするためのユニークなPOP(売場における商品を紹介するポスター)広告。

(3) 相鉄ローゼンの競争戦略差別化集中

a 相模原鉄道の小売子会社、相鉄ローゼンの店舗。相鉄線沿線駅前にスーパーを展開する。

b 本部に権限を集中したチェーン・オペレーションを行っているため、各店舗の権限が小さい。そのため、競合店へ柔軟に対抗することが難しい。

c 買いやすい店。通路を広く取り、整然と商品を陳列している。そのため、高齢者のファンが多い。

d 農家直送の野菜などで、商品の鮮度や安全性を強調。価格では対抗できないため、価格の安さばかりを強調しない。

e 素人カラオケ大会などを開催し、地元顧客に密着する。
3.品揃えと営業政策

(1) 死に筋商品をあえて陳列(AZスーパーセンター@鹿児島県)

a 消費者の多様性に応える。店の数が少ない地方では、専門店以上の品揃えを求められる。

b 他店で売れない商品を安く仕入れられる。

(2) 流行やファッションを追わず、低価格帯商品に限定する(プラント@福井県)

a 流行やファッションを追わない、生活密着型商品を多く品揃えすることで、ワンストップ・ショッピングを可能にし、毎日来店して貰えるようにする。

b 価格のフルラインを進めず、中価格帯から下の価格帯の品揃えを豊富にし、安いイメージを確立する。バーゲンなどをせずに、EDLP(Every Day Low Price)に徹する。

(3) PBの粗利益率を下げ、激安を演出(ホームセンターコーナン@大阪府)

a PB(店のオリジナル・ブランド商品)の粗利益率をナショナルブランド商品より下げ、激安を演出し、PBの販売量を増やす。

b PBが店の独自性につながる。

(4) 24時間営業(AZスーパーセンター@鹿児島県、ディナーベル@北海道)


a ライフスタイルの多様化で、深夜の顧客も案外いる。他に深夜時間帯の営業店がなければ、独占的地位を確立できる。

b 24時間営業している、ということで地域の顧客の意識に印象を強める。また、コンビニの顧客を奪う。

c 深夜の絶対的顧客数は少ないため、人員を減らす、パート職員だけにする、など低コスト・オペレーションを徹底して、損益分岐点売上高を下げなければならない。

(5) 個店主義(オオゼキ@東京都)

a 個別店舗に仕入の権限を委譲し、地域に密着した仕入を可能にする。また、仕入の厳選が商品ロスを減らす。

b 週に1回、各店舗の仕入責任者が集まり、希望する仕入商品が同じならば共同で仕入れて、仕入コストを下げる。また、仕入れ値の情報を共有する。

c POSで販売情報をフォローする。

4.低コスト経営

(1) 田舎の立地(プラント@福井県)

a 田舎に立地することで、低コストで、大型店の出店が可能。大規模な駐車場を用意し、商圏を広く取る。

b 従業員を低賃金で雇用しやすい。

(2) 本部の管理コスト低減(ユーストア)

a 本部の社員を減らし、ルーティンワークをパートに任せる。

b 本部を建設コストの低い田舎におく。

c 店長の給与を高めにし、各店舗へ権限を委譲し、本部の負担を軽くする。

(3) 定年退職者の活用(ジョイス@岩手県)

a 夜間営業を行うため、人件費の安い定年退職者を雇用する。

b 社会経験豊かな高齢者ゆえに、顧客サービスは低下しない。

(4) 社員教育の充実(マルト@福島県、ユニバース@青森県)

a 新入社員にテストを課す。(マルト)

b 全員参加による売場改善コンクールを行う。(ユニバース)